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その頃、居残った三人は二人がいないことに気がついた。
「あれ、正宗さんたちがいません!」
「あ、ホンマや。薙扨ちゃんと二人でとっか往ってしもたんや」
二人はきょろきょろとあたりを見渡す。
明らかに正宗達の姿はない。
「なんと! 二人でですか。むむむ」
「なにが、むむむや」
「……ここにメモが……ある」
イラついている二人に阿利洒はテーブルの端にあったメモを見せる。
それを鞘歌がとる。
「あ、ホンマや。これ見たらどこ往ったかわかるなぁ~」
「ちょっと早く見せてください!」
二人はそのメモを見て行き先を知り驚愕する。
驚愕する二人の顔を見つつ阿利洒は鞘歌からメモを奪い取る。
そして行き先を知る。
「……キングの……家」
「キングの家やて。キングの家やて……何で往ったんや!?」
「これはきっと迷惑をかけないように二人で殴りこみですね」
薺は納得した。
それは自分勝手な納得である。
そこに他人の考えなど一切入り込む余地はない。
「いや、殴りこみて。いや、さっきしとったけどな。殺気満々で」
「……さっきと殺気……うん、いい」
阿利洒は静かに爆笑する。
爆笑とは大声でわっと笑うことを言うが阿利洒はこれでも大声の部類である。
鞘歌はそれを見て少し顔がほころぶがすぐに戻して薺をみる。
いまだ変わらずやる気に満ちた顔をしている。
「いや、え? 往くきなん?」
「ふ、正宗さんに加勢してこそですよ」
「殺気……満々」
シュッシュッと手を前に突き出す。
そんな薺を見て鞘歌は頭を抱える。
これでは同じことの繰り返しである。
ループなど見たくはない。
「さぁ往きますよー!」
「あっちょっ! まってぇやー!」
「……殺気が……さっきから……満々……ふふ」
三人はドタバタとしながら総一郎のところへと向かう。