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「まぁ結論からしてお義父さんはちゃんと父親してるって言うか……」
「しすぎってことっすね」
隣の3人を無視して正宗と薙扨は結論づける。
2人は自分のしたことを後悔していた。
総一郎は結局は親だったのだ。
それを自分たちは否定したのだ。
正宗はそんなに強い人間ではない。
何年も前にしたことをずっと後悔し続けるような人間だ。
薙扨もそれを知っている。
2人はいてもたってもいられない状態だ。
「これは即、お義父さんの所に行こう」
「あやまるんすね。わかってるっすよ」
「ああ。あの3人は置いていこう。きっと面倒なことになる」
そう言って2人は3人を置いて家を出ていく。
3人はそれに気がつかずに会話をつづけていた。
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「いやぁ、お義父さん。こんな短時間で会ってくださってすいません」
「いや……」
「さっきはすいませんでした。お義父さんは親でしたよ」
正宗は頭を下げる。
総一郎はそれを見て驚く。
予想していなかったのだろう。
「今回の件はおれと薺が結婚して幸せになってほしかった。だからしたことなんでしょう?」
「ぼくや鞘歌さんに阿利洒ちゃんが争わないようにまとめて結婚なんてことにしたんすよね。わかるっす」
総一郎は図星を突かれまくり驚き続けることになる。
正宗と薙扨はやはりといった顔をする。
「なぜすべてわかった」
「まぁ、遅かれ早かれまぁ、その争ったと思うっすよ。うん」
「お義父さんの考えは正解だと思います。ですが事が大きくなりすぎている」
正宗の言葉に総一郎は少しうつむく。
薙扨は少し分が悪そうに頭をかく。
「後おれの心の準備ができてないです。いきなり嫁さん4人は未成年にはきつい」
「それは困る」
「困るって言われても困るっていうか……ああもうっ!」
「ああ、先輩がいつものパターンに入ったっす……」
正宗はどうにもならないと地団駄を踏み始める。
薙扨にとってはなれたことなので頭を抱える。
「うれしくないって言うか。うれしいって言うか……違うんすよ! うれしくないわけがないんすよ! そりゃ最高ですよ! でも最低なんです!」
「結局どっちなのだ……」
正宗のどっちつかず発言に総一郎はつっこむ。
それに対して正宗は思いをぶつけるように答える。
「どっちでもあります。ただもう少しちゃんと薺に愛していることを伝えましょう」
「むぅ」
「子供に愛を伝えるのに脅え止まる。それは親としてどうなんです!」
総一郎は黙る。
まさにその通りなのだ。
それを見て正宗は話を続ける。
「言えばこの喧嘩も終わりです。それが決着なんです」
「……たしかにな。……久しぶりに薺に喜ばれることをしてやれると思ったのだ。最後にしたことと言えば家を与えたことだ……やつは母彩が死んでから一人なのだ。時折しか会うことはなかった……」
「そりゃ全然会えてないっすね」
「まぁ、複雑な家庭事情だしね……」
薺が一人であんな大きな家に住んでいるのか理由は知っている。
母親。
兄弟。
王族。
いろいろな理由がある。
よくよく考えれば親が生きていて子が生きていてそれでも親子はできないのだ。
「でも、愛をちゃんと伝えることはできる。しなくちゃ伝わらないんです」
「うむ……」
「その答えはっ」
「伝えよう。私の愛を。そして、ありがとう」
「お義父さん」
正宗は笑顔で総一郎を見る。
そして総一郎は言う。
「だが結婚はしてもらう」
「……はい」
「あ~結局そうなるっすね」
正宗は肩が重くなった。