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「すまんな。迷惑をかけたの」
「いや、まぁ、特に、いや、はい」
「先輩は迫られるとはっきりしないっすね。いつも」
そうこうしているうちに刹徳が窯洒の服をつかみ引きずって行ってしまった。
正宗達はそれをただ見ているしかなかった。
「いや、あれ何だったんだろうね」
「まぁ家具を運んできてくれたんだからそれでいいんじゃないすか?」
二人はそのまま部屋に入ろうとする。
その時ふと後ろを向く。
「あれ……どうするんすかね」
「コトッとコットが置いてるね」
「ああ、最高なネタを聞けて最高っす!」
「……ありがとう」
正宗は笑顔でコットを見つめた。
薙扨は最高の笑顔で正宗を見つめていた。
二人の笑顔は意味が違っていた。
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リビングに向かうと机に向かって全員が席に着いていた。
「っと、席が一つ足りないな……まぁいいやおれは立っておこう」
そう言って正宗はテーブルの横に移動する。
薙扨はトコトコとその近くの空いていた席に座る。
そして正宗がコホンと咳をする。
「ま、とにかく今回のことを話そう」
「父上がわたし達を政治に使おうとしているんですよ!」
正宗が話し始めようとすると遮るように薺が立ち上がり怒鳴る。
正宗は頭に手を当てる。
「薺。少し落ち着こうや」
「あ、す、すいません。なんか再発しちゃって……」
薺は席に座る。
正宗は再びこほんと咳をする。
「では取り直して。まぁ今回の結婚報道についてだ」
「突然すぎたっすよ。なぁんにも知らなかったっす」
「うちには手紙が来とったで」
そう言って鞘歌はポケットから手紙を取り出し見せる。
それには今回のことが書かれていた。
「こんな手紙が……」
「……これ」
「って家にも来てたんすか」
「来てた来てないも関係ないです。やることになったのがおかしいんです」
薺が再び立ち上がり怒鳴る。
正宗はそれを止めようと近づく。
「全く父上はいっつもこうなんです」
「薺。落ち着いて……」
「父上はいつもこうです。わたしが遊びでおままごとをしているとプロの役者を連れてきてテレビ放映したり。わたしがテストで百点を取ったら王国勲章授与式をやったり……」
「あ、テレビで見た記憶あるなぁ」
「……知ってる」
鞘歌と阿利洒は知っている知っているといろいろなことを言い始める。
それを聞いて行くたびに正宗と薙扨ははあんぐりとする。
泳ぎたいがために国最高のプールを貸し切りだとか、こんな漫画が読みたいと言ったら国中のプロに薺が主役の望んだ漫画を書かせたりなど。
それを聞くと総一郎がどんな人間かは理解できる。
薺達3人は会話をつづけているが正宗と薙扨はひそひそと会話を始める。
「やっぱり王様も普通に親なんじゃないっすかね」
「今の話を聞けばどう考えても親馬鹿な人なんだとしか思えないな」
「なんであの三人は変に思わないんすかね」
「慣れだな」
「慣れって怖いっすね」
二人は肩を落とした。