3
「ま、うちと窯洒が二人でそろうてきたんや。今までのキーワードをすべてつなげれば答えは簡単や」
「びょ、病気がちの窯洒のお姉さん?」
「はい、正解やで~プレゼントはう・ち♪」
頭にリボンを結びながら鞘歌は正宗に抱きつく。
正宗は汗をダラダラ垂らしながら固まる。
窯洒は泣きながら二人を見ている。
(創像機のパイロットになったから鞘歌さんはここで済むことになった。そのせいで今まで自分一人で支えてきた姉がほかの男と、しかも複数人の女と住んでるやつのところに向かわせなきゃならない。そりゃなくし怒るよ)
そんなもの誰が考えてもわかる。
そんなところに大事な姉を送る弟など存在しない。
もしいるとしたら気が狂っているのか、あるいは……
「正宗!」
「は、はい!?」
「俺はお前を信頼してるんだ! 大事に……大事にしてやってくれ」
「か、窯洒……」
相手を信頼していること。
信頼していないものには大事なものは託せない。
そんなことは当たり前である。
信頼しているからこそ託す。
窯洒の涙はそれを語っている。
「そんな、姉が結婚するとかそう言うのじゃないんだよ……」
「あれ? 創像機のパイロットは結婚する決まりやないの?」
「そんなきまりを聞いたことはないんだが……」
「いや、だってこの家にいるみんなはもう結婚しとるやろ?」
「はい?」
正宗はよくわからないといった顔をする。
そんな話この家では一度も聞いたことがない。
鞘歌は首をかしげながら言う。
「だって結婚式は来週やろ? キングが大々的にやる言うとったで」
「いや、まってよ。薙扨以外は知り合って一月かそこらなんだよ!? 早すぎるよ!」
「でももうテレビとかでやっとるよ?」
「はい?」
正宗は再びよくわからないといった顔をする。
すると廊下からドタバタとした音が聞こえる。
薺と薙扨が走ってきたのだ。
「ま、正宗さん! て、テレビで!」
「結婚! ニュースで!」
「ほらな」
「いや、国ぐるみの罠ってやつだこれは。いや、展開が早すぎる。こういうのはもう少し過程があるもんなんだ。ラノベ主人公的存在のはずなんだおれは……」
「序盤で結婚するってのはありえへん訳やないけどな」
「あれ、この世界にラノベはないはず……」
「雰囲気でわかるわ」
正宗は肩を下ろした。