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「いやぁ、先輩が目覚めてくれて本当に良かったっすよ!」
パクパクと豪快にご飯を食べながら薙扨はそう言う。
正宗はそれを見て笑う。
そして薙扨は薺に向かって茶碗を渡す。
薺は特に怒りもせずに薙扨におかわりを渡す。
「およ。親切になったっすねぇ~」
「不親切は不仲を生み出すだけです。ね、正宗さん」
「ああ、仲良きことは美しきかなってやつだ」
正宗はご飯を食べながらそう言う。
箸を踊らせながらにこにこと笑っている。
薙扨は少しムスッとする。
「なんかわかりあってるっすね……むかつくッス」
「むかつくのはダメ。笑顔で話そう」
「……ま、正宗さんがそういうなら仲良くしてやらないこともないっす」
「どっちなんですかね、それ」
フフフと食卓に笑いが広がる。
無口で何も言わずに食事を続けている阿利洒も笑顔ではある。
家族の団欒というものが感じられる。
(……こんな感じが長く続くといいんだけど)
正宗は心の中でそうつぶやいた。
『ピンポーン』
部屋の中にチャイムの音が鳴る。
阿利洒以外の箸が止まる。
「もうお昼ですからね。お客様もこんな時間に来ますよね」
「来る予定あったの?」
「ないですね」
きっぱりと言う薺の言葉を聞き、正宗は立ち上がり玄関へ向かって歩く。
棚に置いてあったハンコを持ちながら。
「ま、宅配便だろ。おれが行ってくるよ」
「あ、どうもすいません」
正宗はそそくさと玄関に向かう。
しかし玄関に向かうと扉をドンドンと叩いているのがわかる。
チャイムも間隔をおいて何度かならされている。
「なんだ、なんだ」
正宗は催促に応じるように扉をあける。
すると同時に胸ぐらをつかまれる。
「正宗ぇぇぇぇ!」
「うわへ!? か、窯洒!?」
「お前、何してくれとんじゃぁ!」
「何? 何かしましたっけわたくし……」
少し宙に浮いた状態で正宗は窯洒に問いかける。
窯洒は少し泣きそうな顔で答える。
「くっうぅぅぅ……おまえは気かづいとらんのじゃぁ。お前はぁ~」
「な、なんかしゃべり方がいつもと違う……」
「怒り狂うと訛りが出るんじゃ!」
「な、なまり? ま、まさか獣耳族訛り……」
正宗がそういった瞬間、窯洒は頭のバンダナを外す。
するとそこから現れたのは獣耳だった。
「け、獣耳族……何かした……ま、まさか!」
「そう……うちや……」
窯洒の後ろから見慣れた女性が現れる。
それは見慣れた獣耳に八重樫の女性だった。
「さ、鞘歌さん……」