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「う、ん……見慣れた天井……おれの部屋?」
正宗は目を覚ますと見えるのは見慣れた天井。
あたりを見渡すと見慣れた家具。
そこはこの世界に来てから正宗が暮らしていた部屋だった。
正宗は体を触る。
特に異常はない。
普通に起き上がることもできた。
「怪我も何もしてないのにベットに寝かされていたのか……」
正宗はベットからおり、出入り口に向かう。
そして扉に手をかけようとする。
すると先にとっては動いた。
そして。
「ふぎゃっ!?」
「はぇ!?」
ドカッと扉に正宗はぶつかる。
と言うよりぶつけられた。
正宗は顔を抑える。
「っう~。何だよこのギャグ展開。現実はうまくいかねぇもんだ……」
「だ、大丈夫ですか正宗さん」
「あ、な、薺?」
「そうです。あなたのパートナー薺です」
薺がにっこりとしながら正宗に語りかける。
ワイシャツとネクタイにスボンという男のような格好である。
いつもどおりに似合っているその格好は正宗の目を引き付ける。
正宗は少し顔を手で押さえつつ話を続ける。
「いやぁ、薺。その、何日くらいおれは気を失って……」
「あ、半日くらいです」
「あ、そうなの……」
もっと長い期間眠っていたと思った正宗は拍子抜けする。
正宗は二重の意味で顔を押さえる。
いや、顔も痛いので三重である。
「恥ずかしいわ、拍子抜けだわ、痛いわ、もう大変だわ」
「わわわわって感じですね。それより目がさめてよかったです!」
「普通に寝てた感じだけどね」
正宗はちらりとペットをみる。
するとよく見るとベットの横に見慣れた人物が横たわっているのを見つける。
正宗はその人物に近付きそっと布団をかける。
「薙扨は心配してずっといてくれたんだな……」
「ええ……」
薙扨にやさしく微笑みかける正宗を見て薺は少し悔しそうな顔をした。
正宗は布団をかけ終わるとくるりと薺のほうを向く。
そしてナズナのほうにも近づく。
「心配かけるっていやだな」
「そうですね……」
「今もかけてる感じだ」
薺を見て正宗はそう言う。
薺ははっとして正宗を見る。
正宗は笑顔で笑っている。
「おれってこんなラノベ主人公みたいな立ち位置にいるけど、鈍感じゃないつもりだ」
「ラノベ?」
「……ないのか。……いやまぁなんだ。みんな大事な仲間で、家族なんだ。贔屓なんて誰にもしないよ」
「正宗さん……」
二人は見つめあう。
すると扉が開く。
「……わたし達は家族……一緒にご飯を食べよう」
「あ、阿利洒ちゃん。聞いてたのね」
扉の外から現れた阿利洒は一緒に食事を食べようと催促する。
薺と正宗は顔を合わせてフッと笑う。
「グッスリなところ悪いけど薙扨を起こすかな」
「……家族は一緒に……ご飯」
「はいはい」
三人は笑顔だった。