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「そろそろお昼っすね」
「ちょうどええわ。ここにお得意のとこで買った美味しいパンがあるわ」
ごそごそと手に持っていたカバンの中からいくつかのパンを取り出す。
その中からメロンパンを取り出し薙扨に渡す。
薙扨はうれしそうに受け取る。
「メロンパンっす~♪」
「ん。メロンパン好きなん?」
「甘いパンは何でも好きっす」
ハムハムとメロンパンを食べる薙扨は歳に似合わぬかわいさだった。
だが見たるにあったかわいさであり、誰が見ても和むだろう。
鞘歌は『ホー』といった感じに薙扨を見つめながらクロワッサンを食べる。
「ハッ! 薙扨がメロンパンを食べている!?」
「あ、気いついた」
正宗がハッと顔をあげて薙扨のほうを見ている。
そしてそっと薙扨の上に手が伸びる。
そして撫で始める。
「薙扨はかわいいなぁ~」
「うぁっはぁ! いきなりはやめてくださいっすよ、先輩」
「ハッ! いつの間にか薙扨の頭をなでていた……いけない、いけない」
そう言って正宗はサッと手を放そうとする。
が、ガッと薙扨に手をつかまれる。
薙扨は無理やり正宗の手を動かし頭をなでさせる。
「気が済むまでなでてくださいっす~」
「は、はは。気が済むまでなでるよ」
正宗は強制ではなく自分で薙扨の頭を撫で始める。
薙扨は猫のように喜びながらメロンパンを食べる。
(獣耳族のうちよりはるかに動物してるでこの娘……)
鞘歌は薙扨を見ながら心からそう思った。
もはや自分の立ち位置がない。
そう思っていた。