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あの事件から一日。
「ふふん。朝ご飯を作ったっすよ!」
「勝手にわたしのキッチンを使ってくれちゃって……」
料理を作って満足そうにしている薙扨と勝手に作ったことにイライラしている薺がリビングにいた。
正宗は机の上にあるものを見てみると渚が打ちに来た時によく作ってくれるものが用意されていた。
「いやぁ、ここ品揃え悪いっすね。何とかこれだけ作れたっすよ」
「なんとかって何ですか! 私ならここから美味しい料理をたくさん作れますよ!」
薺の叫びから二人はガミガミと言い争いを始めてしまった。
正宗は気にせずに席に座り食事を始める。
阿利洒はすでに食べ始めていた。
「うん。おいしいなぁ。洋食も久しぶりだわ」
正宗がパクパク食べているのはミネストローネ。
トマトの味が引き立てられている。
横に置かれていたパンも食べる。
これは薺がお菓子用に買っていたものだが朝ごはんとしても有効のようでマッチしている。
「……おいしい」
「てすっすよね~」
阿利洒の感想がうれしく薙扨はニッコニコと笑う。
その隣で薺はイライラとしながら地団駄を踏んでいる。
「さてはて、薙扨。おれと一緒に大樹に行こうか」
「ほぇ? ででで、デートっすか!?」
「まぁ、なんつうか案内も含めてるけど、そういうものかな……おれも来て日が長くないけど」
その言葉を聞いたとたん、薙扨は庭を駆け回る猫のように喜んだ。
薺は獲物を狙うメスライオンのように薙扨をにらんでいる。
「正宗さぁ~ん。案内なら私のほうがいいと思いますけど~」
「え、いや、だって……まぁとにかく今回は俺が連れてくからさ」
薙扨は地団駄を踏みながら用意された食事を食べた。
食べながら泣いていた。
それはうまかったからなのか悔しかったからなのか。
それは誰も聞くことはない。
「と、とりあえず飯を食べ終わったら出発しよう」
「はいっす!」
薙扨は喜びながら食事を始めた。
阿利洒は特に何もなく普通に食べている。
微妙な空気になった食卓で正宗はただ食事をつづけるしかなかった。