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「って、大事なことを忘れていた!」


正宗はハッと顔を上げる。

薺は頭に『?』というマークが浮かんでいそうな顔で首をかしげる。


「他の、いや他に3人くらい人がいなかったか」

「他の人ですか? 多分他のところにいると思いますよ?」

「ここにはいないのか……」


そう言って顔を下に向ける。

が、薺の言葉に疑問を抱きすぐに顔を上げる。


「えっ? 他のところにいる?」

「ええ、あなたと一緒に来たなら」


薺の言っていることがよくわからず首をかしげる。

薺は正宗が首をかしげる意味がよくわからず首をかしげる。

正宗はとりあえず、その疑問は置いておいて話しかける。


「あ、そう言えばおれの名前を言っていなかった。おれは正宗。早河 正宗」

「早河正宗? 長い名前ですね」

「いや、早河は名字で……」

「み、みょうじ?」


首をかしげる薺を見て正宗は頭を押さえる。

苗字が伝わらないとは思わなかったからだ。


「名字がないのか? そんな馬鹿な……」

「あ、もしかして称号みたいなものでしょうか」

「は? 称号?」


『意味がわからない』と思っていると誰もがわかる顔をしている正宗に対し、薺は説明する。


「キングやエリートなどという称号を名前の前に着けます」

「なるほど……」


昔、名字がなかった時代に地名や仕事などをつけ名前で呼び合っていたこともある

正宗は納得した。


「さて、そろそろ行きましょう」

「い、行く? どこに?」

「キングの所へです」

「え?」


正宗は唖然とした。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


身支度を整えられ、正宗はキングの家の前に連れてこられていた。


(キングの所というから城みたいなものを想像していたが)


目の前に立っているのは超和風の大豪邸だった。

キングという称号とは似ても似つかないものだった。


(まぁ、この世界とおれたちの世界は違うってことか。あくまで似て非なるものなんだな)


そう考えながらきょろきょろとあたりを見回す。

するといろいろとおかしな点を見つける。


(使用人は執事服にメイド服。生えてる花も洋風……あからさまに日本では変だな)


自分の常識と違うところを見つけ、異世界という認識をさらに深める。


「正宗さん。キングの準備ができたようですよ」

「あ、ああ……」

「あの、その何か聞かれたときに返答するときに『あ』とか『え』という癖直したほうがいいですよ」

「えっ。あ、ああ……」


薺の忠告もむなしく正宗はそのままだった。

長年の癖はそうすぐには直せない。


「今回だけ気を付けてください……」

「ごめん……」


二人は何もしゃべらなくなった。

周りの使用人たちはそれを見て少し笑っていた。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「うむ。来たか。おぬし名前は正宗というらしいな」

「あ、はい」


目の前にいる人物は藍色の髪。

正宗はその髪の色を見て正宗は何かに気がついた。


「ま、まさか……」

「む。何がまさかかな?」

「薺……さんはキングの娘なんですか」


正宗はゴクリと息をのむ。

するとキングは口を開く。


「その通り。わたしが薺の父。キング・総一郎である」

(や、やはり……て言うか総一郎ってめちゃ和名じゃん!)


正宗は名前がかなり意外だったことに驚愕した。

薺がキングの娘だと言うことには特に驚かなかった。


「で、で、何でしょうか」

「そうかしこまらなくてもいい。おぬしはこれからこの国の者となるのだからな」

「えっ」

「おや、何も聞かされていないのじゃな。おぬしは選ばれし者。創造者なのだからな」


キリッとした目でキングに見つめられ、プレッシャーを感じ、言葉を発することができない。

聞きたいことはいろいろあるのだが聞くことができない。


「たっ、大変です!」


そんな空気の中、ドタドタとした足音と叫ぶ声が壊す。


「どうした」

「リアビが出ました!」

「リアビが出ただと? コット隊はどうした?」


目の前で行われていることが理解できず、待っていることしかできない。

正宗はなんとなく横にいる薺を見た。


「ふふふふふ」

(なんかにやにやしてるー!?)


もはや、何が何か分からず正宗は困り果てるしかなかった。


「正宗殿!」

「はっはいっ!?」



薺のほうを見て油断していたところに突如話しかけられ正宗は驚いた。



「話は聞いていたな?」

「えっ? あ、いや……」

「もちろん聞いていました! ね!」

「えっ? あ、えと……」

「では、頼んだぞ!」

「はい!」

「えっ?」



何が何かも分からない状態なのだが、薺に腕を掴まれ引きずられているかのごとく連れて行かれるのだった。


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