10
「今日を楽しかったわ」
大樹の下。
つまりは入り口に二人は立っていた。
「いやいや、おれもいろいろ楽しませてもらいましたよ」
「そやね。いろいろ楽しんだなぁ~」
ニヤニヤと鞘歌は笑う。
正宗はそれに対して顔を赤らめて叫ぶ。
「いろいろってのはそういうのじゃない!」
「わかっとる、わかっとる。年上の余裕ってやつやよ」
鞘歌は笑いを絶やさずにエッヘンとポーズを決める。
正宗は『アハハ……』と肩を落として笑っていた。
「ま、またいつか会いましょうよ」
「うんうん。うちはよくここに来とるからここに来れば会えると思うよ」
すっと鞘歌は手を出してくる。
正宗もそれにこたえるように手を出す。
「じゃ、またね」
「ええ、また」
そして握手をする。
その瞬間再びあの感覚を感じる。
(また静電気か。もう驚かんぞ!)
正宗は平常心を装った。
そして握手をやめ、正宗はくるりと振り返る。
「あばよ、鞘歌さん」
そう言って帰路へと付いて行った。
「……今のなんやったんやろ? 静電気の仕返しかな?」
鞘歌は今の感覚に疑問を持っていた。
今回は静電気ではなかったのである。
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「ただいま~」
「あっ、おかえりなさいです。遅かったですね」
帰宅すると、薺が笑顔で迎え入れてくれる。
「いろいろあってね」
『ハハッ』と正宗は軽く笑う。
その笑いを聞いて薺はにこっと笑う。
「そうですか~」
「そうさ」
ふふふと二人は笑っていた。
「おなかすいた……」
テーブルに向かって椅子に座っていた阿利洒はポツンと呟いた。