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「あ、えと。これは」
正宗は自分の手を見る。
ビリっときた。
正宗は以前にも同じような感覚を覚えた記憶がある。
阿利洒と接触したときである。
(まさか、鞘歌さんも!?)
バッと顔をあげて鞘歌の顔を見る。
すると鞘歌はクスクスと笑っていた。
「びっくりした? 静電気やよ。静電気」
「せ、静電気~!?」
正宗は眼をパチクリとさせる。
さやかはそれを見てクスクスと再び笑う。
「か、仮にもファンっていう人がこんなことやっていいと思ってんすか?」
「ふふ。だって面白そうなんやもん。想像以上にフランクやし」
「ったく……」
正宗は少し安心した。
少しがっくりもしたが落ち着いた。
(静電気でよかった……)
ホッと胸を抑える。
「しかし、年上なんだからもっとしっかりしててもいいのになぁ」
「年上ゆうたかて、うちはまだ19やよ」
「おれは17だし明らかに年上じゃないすか」
「うう……年下に遊ばれとる……」
オヨヨと泣き声をあげる鞘歌。
正宗はそれを見てクスクスと笑う。
それを見てさやかもクスクスと笑う。
「ふふっ。短時間の付き合いなのにこんなに笑いあえるなんてすごいわぁ」
「ああ、ついさっき会ったばかりなのにね」
二人はクスクスと笑い続ける。
「そや。大樹の中にうまいパン屋さんがあるんやけどいきません? おいしいで!」
「おーいいね。行こう行こう!」
二人は意気投合しながらパン屋に向かった。