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「はむはむ……」
正宗は一人残って朝の食事の残りを食べ始めた。
「はむはむ……」
いつも通り美味しい食事を一人で黙々と食べる。
「はむはむ……」
その顔は笑顔だった。
一人で静かに独りで気楽に食べる御飯もまたうまい。
多人数でにぎやかに食べるのも楽しいがこれもまたいい。
「はむっはむっ」
実にいい。
正宗は笑った。
「何笑ってるんですか?」
「!?」
見られた。
「お、美味しかっただけだよ。ご飯が」
少し顔を赤らめる。
感想は本当のことなのですらっと口から出た。
「そうですか」
薺はニコッと笑顔になる。
正宗はそれを見て『ハハッ』と笑う。
「そ、それより。荷物は運び終わったの?」
「ええ。阿利洒ちゃんは部屋を整理して荷物を置いたりしたりしてますね」
「そう。手伝いに行こうか」
そう言って正宗は椅子から立ち上がる。
それを見て薺はくすっと笑いながら言う。
「一人でいいそうです」
「そっか」
正宗は再び椅子に座る。
そして机の上にある残り少しのご飯を食べ始める。
「ふふっ」
「んぁ?」
「おいしそうだなって」
そう言われた正宗の顔は再び真っ赤になる。
それを見て薺はクスクスと笑う。
「はぁ、のどかですねぇ……」
「のどかだねぇ……」
食べ終わった食事の食器を重ねながら正宗はそう思った。
薺も笑顔だった。