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「まぁ、なんじゃ。ここに来たのも何かの縁じゃし。何か見ていかんか」
「そうですねー。じゃあ何か発明品見せてもらえますか?」
その言葉を聞き、待ってましたと言わんばかりに博士は箱を取り出す。
そして正宗の目の前に置く。
正宗はその箱をじっと見る。
「これは何なんです?」
「まぁ見ておれ」
箱の横にあるスイッチを押す。
すると箱の上に映像が現れる。
正宗は驚きの言葉を上げ、阿利洒は目を光らせて映像を見ている。
「すごい……」
「ほぇ~立体映像ですか」
「うむ。いずれはさらに大きなものにする予定じゃ」
そう言ってはこの横のスイッチを再び押す。
すると箱の上の映像が消える。
正宗は特になにも思わず、次に博士が何を出すのかを期待する。
阿利洒はこの世の終わりかのように絶望した顔になった。
「……もう終わり……なの?」
「ん? いや、次もあるぞ。ほれ」
「これは携帯電話?」
目の前に出されたのは携帯電話のようなものである。
初期型と言えばいいのだろうか。
持ち運びは楽であり、別に肩にかける必要のあるものではない。
正宗は見慣れたものを見て普通にしているが、阿利洒は尋常ではない。
目をキラキラさせてワクワクさせている。
「ねぇ、なに……これ……」
「これはとくに名前も考えとらんかったが、創像機のやつが言うとった携帯電話でええかの」
「携帯……電話……」
そう言いつつ、心を抑えられなかったのか阿利洒は携帯電話を手に取る。
そこにあるボタンを適当に押し始める。
それを見ていた博士がもう一つの携帯電話を正宗に渡す。
「あ、これで通信できるんですね」
「よくわかっとるの。まぁ今のところこの二つしかないんじゃが。この青いボタンを押せば二つがつながるようになっとる」
「押す……」
待っていましたと言わんばかりに阿利洒が青いボタンを押す。
すると正宗の携帯電話が震える。
そして正宗も青いボタンを押す。
『はい、もしもーし』
『……近くにいるから、普通に聞こえる……』
『いや、そうだけども……』
そうこうしていると阿利洒が赤いボタンを押し通信を切る。
正宗はやれやれという顔で阿利洒を見る。
阿利洒は少し不貞腐れていた。
「子どもだなぁ~阿利洒ちゃんわさ」
「わたしは……子供じゃない。もう15歳。大人……」
「うん。大人、大人」
そう言いつつ正宗はポンポンと頭を叩く。
阿利洒は恥ずかしそうにその手を振り払う。
正宗はフフッと笑う。
「さて、博士。携帯電話はお返ししますよ」
「いや、お主らが持っておいてくれ」
「いいんですか?」
「いいんじゃ。丁度いいからテストしてくれ」
そう言われた正宗は携帯電話をポケットにしまう。
阿利洒も一応ポケットにしまう。
「さて次は……」
『ヴーヴーヴー!』突如警報が響きだす。
正宗は警報の音が響く方向をみる。
阿利洒は扉に向かって駆け出す。
「二人とも動くでない!」
「「!?」」
突然の博士の叫びに二人は動きを止める。
そして博士は何かのスイッチを取り出す。
「ちょうど二人おるんじゃ。何が来たかは知らんがどうせリアビじゃろ。テストしてもらうとしよう」
「「テスト?」」
「うむ。ポチッとな」
下から『ガチャっ』という音がするので、二人は下を見る。
しかし見た時には既に遅かった。
二人は自分の足元に空いた穴に落下していっていたのである。
「「!?」」
二人は言葉も発せぬまま部屋から消えていった。