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「あっち」
「こっち」
「そっち」
二人はどこに向かっているのか。
それは二人共にもわからなかった。
正宗は阿利洒について往くだけ。
阿利洒は正宗を連れて往くだけ。
その通りに行けば目的地に着くは正常であるときだけ。
正常でなければ目的地に着くはずもない。
「あっち」
「こっち」
「そっち」
この状況が正常かどうか。
そんなもの誰かが見てればわかることだ。
正常ではないと。
「あっち」
「こっち」
「そっち」
阿利洒のさす指先は適当だ。
正宗は疑いもせずについて往く。
扉が5個も10個もあっておかしくないわけがない。
だが突っ込むこともない。
そして阿利洒が戸惑いとまることもない。
「あっち」
「こっち」
「そっち」
二人は止まらない。
なら、いつ止まるのか。
それは……
「あれ……」
「ん?」
「誰じゃ?」
それは終点にたどりついたときである。
「博士」
「博士?」
「博士じゃが?」
それは正常に戻るにはちょうどいい出会いだった。