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「すべてを……すべてを話すことにはしばしのご猶予をくださいっ!」
頭に跡が残るであろう程に床に擦りつけている。
正宗は困惑した顔を。
総一郎は悲しそうな顔をしてそれを見ていた。
「なにとぞお許しください父上! 今は話す時ではないのです! 話す時では!」
「……伝えるべきところは伝えたのか?」
「はい! 伝えております!」
「ふむ。なら、よい」
その言葉を聞くと薺はパッと顔を上げる。
その顔はにこやかな笑顔であった。
総一郎の顔は仕方がないという顔だった。
ナズナは安堵し、ほっと溜息をついた。
「ふぅ……あっ」
ふと横を見る。
そこには真顔で薺を見つめる正宗がいた。
薺は再び恐怖した。
政宗に頭を下げる。
「ま、正宗さん。どうか許してください……」
正宗は何も言わずに薺をじっと見る。
薺は何も言わずに頭を下げ続ける。
総一郎もそれを何も言わずに見守る。
「ま、正宗さ」
「あのさ、薺ちゃん」
「は、はひ!」
薺は顔をあげて政宗の目を見る。
薺をじっと見る正宗。
そして少し経つと正宗はしゃべりだす。
「いつかは……話してくれるんだろう?」
「えっ、ええ! 約束しますよ!」
「ならいいよ」
正宗は大きなため息をついた。
薺はそれに驚く。
「いや、本気で怖かったよ。まさか言わないとか言われたらどうしようかと思ったよ」
「ま、正宗さん! いま私いずれ言うって言ってましたよね!」
「知ってるよ。フクククク!」
「わ、笑って……私で遊んでましたね! 酷いですよ!」
「ハッハハ。めんごめんご」
正宗は舌を出しながら、高い声で馬鹿にしたように謝る。
薺は少し顔に涙の跡をつけなから笑顔でポカポカとマサムネをたたいていた。
「うむ。これもよきことなのかもな」
それを総一郎は笑顔で見つめていた。