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「……けど」
「けど?」
「……副隊長は……よく思ってない」
その言葉を聞くと正宗は分からなくもなかった。
いきなり出てきた人間が自分より活躍する。
つまりは英雄の立場をとられるということだ。
それはかなり嫌なことであろうと、顔をしかめた。
「その副隊長さんはいるんですか?」
「……副隊長は……キングに……呼ばれて……」
「父上のところに、ですか。いやぁ、よかったですね」
「あっ、ああ……」
正宗は複雑そうな顔をして頷く。
薺はわかっていないのか笑顔で阿利洒と話を続ける。
「でもでも、ほぼ英雄扱いなんですよね?」
「……はい……間違いない……です」
「ですって! よかったですね!」
「……うん。そうだね」
薺の笑顔を壊さないために正宗は無難な返答しかできなかった。
自分自身は副隊長の気持ちも分からなくはないのだから。
先ほどのように心の底からは喜べない。
「そうだ! 阿利洒さん。英雄と会ったんだから記念に握手しましょう! 握手!」
「……いや……べつに……いいです」
阿利洒は薺の申し出を断るが薺はそれを遠慮と受け取る。
そして阿利洒の手をつかむ。
「遠慮しないで! ほらっ! 正宗さん!」
「えっ? あ、ああ……」
薺に手をつかまれ、誘導されるがまま、正宗は手を差し出す。
阿利洒も同じように手を差し出す。
薺は誘導のためにつかんでいた二人の手を離す。
「えっと、まぁ、これからよろしく」
「……よろしくです」
そして二人は『ギュっ』と握手をする。
「「!?」」
その瞬間二人は違和感を感じた。
いや、感じたことのない何かを感じた。
二人はそれが何かもわからぬまま手を離す。
「こ、こんな感じでいいんだよな。薺」
「ええ、英雄は求められたらちゃんと握手しないと♪」
「……求めては……いえ、うれしかった、です……」
二人はたどたどしい感じで返答をする。
正宗はぼんやりとしている頭を振りたたく。
阿利洒も頭をポンポンとた叩く。
「二人ともなにしてるんです?」
「あ、いや、ちょっとね」
「気にしなくて……いいです」
「はぁ」
薺は何が何やらよくわからなかった。
だが、二人が同じ行動をしたことに何かむっとした気持ちになった。
二人しか知らない何かがあるように思えたからだ。
「む~なんかむかむかしますね」
「何で?」
「そんなのどうでもいいんですよ! 魔学機の説明にここに来たんです! 説明しますよ!」
「あ、ああ」
「姫様……こわい……」
怒鳴る薺に二人はただならぬものを感じた。