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「ここが私の隣の部屋です」
「う~ん。別に隣というところを強調しなくてもよかったなぁ~」
特に何もなく、棚と机だけがある部屋。
少しほこりが積もっているように見えるがそこまで問題はない。
「少し掃除するか」
「ふぁ、そふひ、ぷはぁ。掃除するんですか?」
薺は布団に顔をうずめ、うまくしゃべることができないようだ。
正宗はやれやれといった顔でそれを見ていた。
「布団を持ってきてくれたのはいいけど、顔うずめたまま喋らないでくれよ……」
呆れ果てたように、そう言う。
薺はえへへと言いながら布団を置こうとする……
「おわぁっ、おわっととと」
そんなとき足がもつれ倒れそうになる。
「あぶなっ!」
転ぶ薺を正宗は助けようとした。
そこで事件が起こった。
『チュッ』という音が本当にしたわけではないがそんな擬音が聞こえる状況。
つまり二人は事故でキスをしたのだ。
「なっなななな」
「や、やってしまいましたね!?」
二人は顔を赤らめ慌てふためく。
薺は正宗に指さしながら叫んだ。
「じ、事故だから! 定番だけど事故だからねっ!?」
「て、定番ですけどもう責任とってもらうしかないです!」
と、定番のフレーズが二人から出まくる。
キスをしたら責任をとるというのはどこでも定番なのである。
「ハァハァ……いや、キスしなくても結局は同じだったんだからここまであわてなくってもよかったですかね……」
「ハァハァ……しなくても同じ?」
薺の言葉に首をかしげる。
薺はしまったと言わんばかりに驚いた顔になる。
「あ、いや、その話は後日っ!」
その言葉とともに薺はドタドタと隣の部屋へと帰って行った。
正宗は何が何やらわからず息を立てながら疲れ果てていた。
「しなくても同じ……それってもう王命で結婚とか決まってるってことか!?」
そう叫ぶが特に隣の部屋から物音も何も聞こえてこない。
そしてなんとなく正宗は壁を叩く。
「この音は……防音だわ」
家の防音は万全だった。