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「ご先祖様なの?」
「ええ、なんでもひいお爺さんがそうらしいですよ」
「その先輩たちは元の世界には帰らなかったのか?」
「『一度でいいから戻りたかった……』これがご先祖様の最後の言葉らしいです」
その言葉を聞いて正宗は少し頭を下げ、手を当てた。
(戻るすべはないってことなのかな? 別におれは戻りたくは……)
ふと頭に一人の少女の姿が浮かんだが、ぐっと頭を振り、考えを振り払った。
「なんでもご先祖様は元の世界に息子を一人残していたらしいですよ」
「だから戻りたかったってことか」
「ええ、そのようですね。親が子と一緒に生きれないのは悲しいことです」
そう言って薺は少しうつむくが、すぐに元に戻る。
正宗もそれを見て気にせず会話を続ける。
「まぁ、ご先祖様は他3組の創像機のパイロットとともに国敵、想造機を倒したのです」
「想造機? 創像機とは違うのか?」
「創像機と想造機は表と裏の存在。まぁいうなれば正反対なんです」
そういうと立ち上がり、薺は本棚から一つの本を取り出す。
ペラペラと本を開き一つのページを正宗に見せる。
「何々? 『想造機とは過去に我が国を侵略しに来た邪悪なる機体であり、想像者が操作、外見などほぼすべてを担当し。創造者はエネルギータンクのようなひどい扱いをしていたという。』か」
「ひどいでしょ?」
「ひどいな。おれ達が今日乗った創像機とはだんちってやつだな」
「だんちですよ、だんちっ! ん?」
「段違いってことだよ」
それを聞いた薺は『へぇ!』と言いながら飛び跳ねる。
それを見て子供だなぁと思いながら和む。
「ま、今はいないんで全く問題ないですけどね」
「思うんだが創像機のパイロットもおれが来るまでいなかったんじゃないのか?」
「いえ、いや、そうでもありそうでもない。みたいな」
「どっちなんだよ」
『ん~』と唸りながら薺は座り込み悩む。
正宗はそれを見ながら足をたんたんと貧乏ゆすりしながら待つ。
そうしていると頭をかきながら薺がゆっくりと話し始める。
「まぁ、なんていうか『この国』に創像機のパイロットは正宗さんが来るまでいなかった。それは本当です」
「……なるほど。まぁ悩むくらいならそのまま言ってくれればよかったのに」
「いえ、あの。どう言えばいいのかが思いつかなくて……」
ポリポリと頭をかく薺。
それを見ながら正宗も頭をかく。
「まぁ、おれも言うのの悩んだかも。同じ立場だったらさ」
「ですよね!」
「……うん」
正宗は微妙な感じになったが、薺はご機嫌だった。
薺はふと時計を見る。
「ま、今日はここまでとしておきましょう。明日は魔学機について話しましょう」
「ああ。じゃあおれはどこに寝ればいいかな?」
「いっしょ……と言うのはまだ早すぎますから私の隣の部屋に布団を敷きますのでそこで」
「布団なんだな……寝具」
そして正宗は自分の寝る部屋へと誘導される。