『イロアス』敗北感
半年ぐらい眠っていたような気がします。
油断大敵。
子供の集団だと思って気を許したのが間違いだったのだが、まさかあのメンバーで先に進むつもりでいるなどとは想像もできなかった。
しかし勝負に『待った』は効かない。
ハルオが反則を犯した時点で彼らの負けが確定し、自動的に残りの『ファミリー』は勝ち抜けが決まった。
どんなに理不尽であってもルールに則っている以上は逆らう事など出来はしないし、してはいけない事を競技者として理解はしている。
このゲームで先に進むためには、如何に相手よりも早く確実に敗北条件を満たすかなのだ。
スタートの時点でそれを行わなかった以上、ハルオがその事に気付いたのは少なくとも競技が始まってから。それも恐らくは自分の存在や発言が引き金になったのであろう。
彼は考え、思い付き、行動に移した。
それに対して俺は油断し、慢心し、浮かれていた。
もうここに残る事はできない。
やっと手に入れたはずのこの素晴らしい世界ともお別れ。
辛く惨めで不自由な現実の世界に戻らねばならない。
それを悟った瞬間、俺の中の何かが切れた。
これで終わってしまうぐらいなら!
俺は全力で走った。
最後だというならば、せめて自分の最高の走りで締めくくりたい。
この先に待っている緩やかな地獄の日々に戻る前にせめて一走、己の持てる全てを尽くして走る。
だがそんな思いは雑念でしかなく、口からは余計な雄たけびが上がり、走りそのものも効率の悪い乱暴な走りになってしまう。
ダメだ。
準備が足りない。
肉体的にも精神的にも、俺には未だ終わっても良いと思える覚悟が足りないのだ。
こんな不完全燃焼な終わり方など認めたくなかった。
自分の想いに対して、200Mというのは余りにも短すぎた。
このままで終われない、終わりたくない。
なんとかして希望を繋ぎたい。
走り終えた後の興奮を抑え、息を整えてハルオの元へ向かった。
胸中には怒りが渦巻き爆発寸前であったが、今ここで短気に発散させてもその場限りの熱冷ましにしかならない。
この状況で俺が望み得る最高の結果は只一つ。
トレードによる残留。
その為には、彼にトレードをしたいと思わせるように印象付けなければならない。
どのような目的があろうと、最終戦で勝ち残る為にはそれなりの戦力が必要になる。
俺にはかつて築き上げてきた濃密な経験と知識がある。
慎重に言葉を選び、彼に俺の価値と人柄の良さを認めさせるように思考を誘導する。
やり過ぎないように、それでいて確実に強いインパクトを与えるように。
そして俺の初戦は辛勝と言える結果に終った。
半年前に書いたものをそのまま上げましたww
今までに書いたのを読み返しますので、続きは今月中ごろには再開できれば……




