背中を見守る者たち
遅くなりました。
飛び飛びなのでイマイチ自分でも何書いてるのかわかってません。
子供たちを蔑ろにしてきた心算はない。
むしろ彼等が無事にこの世界を脱出できるように腐心してきた。
細かい部分はワルガキ共に丸投げしていたかもしれないが、それは役割分担の範疇であると思っていた。
しかし野獣に指摘された事で、それでは仕事を言い訳に家族との仲が疎遠になって行くおとうさんと同じだと気付いた。
確かに彼等とのコミュニケーション量が、不足どころか欠如していた事は弁解のしようが無い。
「そうか、俺は君たちとロクに話しもしてないもんな」
特に迷子の子とは、出会ってからほとんど話をしていなかった。
保護者はどんな人なのか、一緒にこの世界に来たのか。
何故、大人達ではなく、大人と言うには微妙な俺に付いて来たのか。
訊いておくべき事は色々あったはずだ。
俺は護るべきものの事をもっと知ろうとすべきなのだ。
彼らは泣き言も言わずに俺に着いて来てくれた。
彼らなりに精一杯の力で、俺の指示に従って競技に取り組んでくれた。
俺はそんな彼らの献身を当たり前の事と受け止めてしまっていたのではないだろうか。
ただひたすらに子供たちの為と己や他人に言い聞かせ、それを免罪符に最終戦に自分が残ることばかりに拘泥していたのではないだろうか。
これでは彼らよりも、自分の方が余程に子供ではないか。
考えれば考えるほどに己の身勝手さが恥ずかしく、あまりの罪深さに気が遠くなった。
「俺を頼ってくれたのに、何もしてあげられなくてごめんな」
災害救助は身内を後回しにするのが鉄則だ。
それなのに俺は自分の都合を優先し、後から来た子供を残した。
この先に協力者が居るという保障も無いのにリスクを背負わせたのだ。
罪悪感に顔を歪ませる俺に、雄雄しい少女はフルフルと首を振った。
「おにいちゃんはワタシたちの為にたくさん頑張ってくれてるんでしょ」
「ボクたちはナンにもお手伝いできないから、おにいちゃんたちが大変になっちゃってごめんなさい」
悔しげに謝る迷子の子の声は、今にも泣き出しそうに上擦っている。
「あの子たちみたいに上手く出来ないかもしれないけど、ワタシにも何かお手伝いさせて」
こんなにも一生懸命に彼らなりに支えようとしてくれているのに、俺は今までそれを当然のものとして受け入れていたのだ。
この子たちが自らの無力を悔いてさえいるという事にも気付かない、デリカシーの欠如に胸が苦しい。
普通なら堪えきれずに感情を爆発させるような年齢だというのに、こんなにも我慢している事を不思議に思わなかった自分が恨めしい。
俺はバカだ。大馬鹿者だ。
これ以上の謝罪は俺の独りよがりだし、彼らに気遣いをさせるだけ負担であろう。
俺は心の中で彼らに詫びつつ、笑顔で彼らに向き直った。
「俺は君たちの事をほとんど何も知らない」
知ろうともしなかった。
最初は自分の背に負うモノの重さを知ってしまうことが怖かったのだと思う。
その事から目を逸らす事で自分の負担を減らそうとしたのかもしれない。
しかし、もう目を逸らすことはできない。
「君たちも俺の事は何も知らないだろう?」
彼らは首を振る。
「おにいちゃんのことは、あの子達がたくさん話してくれたよ」
「何をして遊んだとか、叱られたとか、喜んだとか、悲しんだとか、いっぱいおしゃべりしたよ」
「おにいちゃんがいればゼッタイ大丈夫って言ってたよ」
どうやら俺はワルガキ共に助けられっぱなしだった。
この『ファミリー』が今まで崩壊しなかったのはあいつらの手柄だったのだ。
彼らの中に在る俺への信頼は、間違いなくあいつ等が残してくれたものだ。
「アンタ本当にあの子たちには好かれてたわよ。まあ保護者って言うよりはガキ大将って感じでだけど」
「そうそう。良く調教された子分って感じかかなァ。自分たちでは結構馬鹿にした発言をするクセに、私たちが何か言ったら猛然と怒り出してたからねぇ」
知らない間にそんなやり取りがあったようだ。
野獣や金髪の警戒が次第に薄くなっていたのはあいつらのお陰だったのだ。
子供を引き入れることで、その様な効果があるかもと想定したことはある。
だが実際に他人から言われてみるとその効果の大きさがハッキリわかった。
何もかも自分が成した事だという思考に陥りかけていた。
何のことは無い。
全てが円滑に進んでいたのは、アイツ等が居てくれたからこそだったのだ。
そう思うと急に不安が襲ってきた。
アイツ等はもう帰ってしまった。
アイツ等抜きで、俺はこの先やっていけるのだろうか?
……いや。そんな不安に負ける事は許されない。
アイツ等が守った『ファミリー』を俺が壊すわけには行かない。
それに応えてくれた『ファミリー』を投げ出す様な、無様な人間にだけは成りたくない。
俺は一呼吸置いて心を落ち着かせた。
「お二人とも、アイツ等の事を気に掛けてくれていたんですね。ありがとうございました」
野獣と金髪に頭を下げる。
「俺は自分がどれだけアイツ等に助けられてきたか……今更ですがわかりました」
皆、神妙な顔で俺の言葉を聞いている。
「そしてココにいる皆にどれだけ助けられているかという事も」
4人+1匹に正対する。
向き合おう。
子供とか大人とか獣とかではない。
きちんと個人として向かい合おう。
今この瞬間、俺は本当の意味で『ファミリー』になろうと思った。
年齢も、性別も、血の繋がりも、種すらも違う俺たちだが、彼らとならきっと成れると思えた。
「ありがとう。俺はみんなと『ファミリー』になれて本当に良かった」
もうここにはいない年少組に感謝の念を送りつつ、彼らの残してくれたものを絶対に無駄にはしないと心に誓った。
そしてそれを維持する為には、もう既にここにはいない彼らが担ってくれた役目を俺自身が引き継ぎ、果たさねばならないのだ。
「なあ、聞かせてくれないか、皆のことを。俺のことだけ色々知られてるなんて『ファミリー』として不公平だよなあ?」
感極まって涙が出そうに成るのを堪えて、精一杯おどけて言ってみた。
強引矢の如しですね。
今月はなんとまだ3話しか更新できてません。
明日から10月ぐらいまで仕事がイベントラッシュですので、今以上に更新が遅くなる可能性が高いです。
しかし現実逃避で早く上がる可能性もあります。




