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戸惑うハルオ

約束ってなんだろう?おいしいのかな?


……


遅くなってごめんなさい。

 

 別れ際の飼育員の言葉から察するに、トレードに出されたのは彼以外の誰かである。

 トレード自体は成立している旨が画面に表示されていたので、約束が守られているのは確実だ。

 そもそもトレード対象について、あちらは特に何も言っていなかったし、こちらもあえて指定はしなかった。

 

 俺からすればヒトである彼が適任であり、彼には自身に科した義務があると思っていたからだ。


 しかし思い返せば、彼が言っていたのは『考えに賛同し協力する』ただコレだけだ。


 彼が義侠心を発揮して助っ人になってくれるものだというのは勘違いであった。

 考えてみれば、彼が無理に危ない橋を渡る必要は無いし、彼は選択出来るポジションにいた。

 そして彼の『ファミリー』には、彼と彼の庇護する動物達にとって都合の良い存在が一人(一匹?)居た。それだけの事だ。


 競技中のあの男の言動はいけ好かなかったが、俺はその印象を正しく覚えておくべきだったのだ。

 もちろん今更言っても仕方が無い。

 あの男は、トレードを了承せず動物達を守るという選択肢を選べたが、そうしなかった。

 むしろ約束自体は守ったのだから、まだマシと思った方が良い。


 俺の目的も、目算は狂ったが果たされているのだから、彼には文句を言われる筋合いなど無い。


 ただ単に俺が、俺の期待を裏切ったあの男を逆怨んでいるだけなのだ。


 だが考え方を変えれば機体以上の結果を得られているのかもしれない。

 対立する可能性の高い人間よりも、従順なケダモノの方がまだしも信頼できるだろう。


 俺は『人類の友』と呼ばれた獣に期待してみることにした。



 

 転移で跳んだ意識が電子の肉体に馴染み、VRの世界と徐々に同調し、やがて完全に覚醒すると、いつもの部屋だった。


 自分を含めて6人。

 最後のワルガキが居なくなり、代わりに増えているのは女だ。

 やはり、あの男はこちらに残らなかった。


 大切な存在とのたまった飼育動物たちと共に現実世界へ帰ったのだ。

  

 俺は飼育員は『動物』を保護することに熱心なのだと信じていたが、ここに彼が居ないという事は、あくまで『彼の飼育動物』を保護するという恐らくは自己保身の為の熱心さだったのだ。


 そんなヤツが、俺のことを『自分と同じ様な理由で行動している』と評したのだ。


 許せないと思ったが、同時にそれはもしかして的を射ているのではないだろうかとも考えてしまう。


 俺の行動原理は『子供たちを助けたい』ではなく『子供を助けないと自分の立場が危ないから助けたい』なのではないかという疑念をだ。

 野獣が俺に『いずれ子供たちを犠牲にし兼ねない』と言ったのも、そういう気配を彼女特有の野生的嗅覚が嗅ぎ取ったからではないだろうか。


 俺は大きく首を振って、迷いを振り払う。


 今ネガティブになってどうする。一段落した今からこそが正念場なのだ。

 目に見えるモチベーションが減少しているからこそ、これから俺の在り様が試される。

 これからの行動で、示して行けば良いのだと自分を納得させた。


 そもそも俺にこんな想いをさせたあの男は、無事に生還しても今後の人生はきっと明るくないだろう。

 自分の担当部署でアレだけの問題行動を起こしたのだから『悪乗りでした』で済まされるわけが無い。

 ここから出るまでに単純計算で5時間以上(多分もっとだが)かかっているから、他の職員に見つからないわけが無く、きっとそれなりの処分が下るだろうと思うと、少し溜飲が下り、冷静になれた。




 全員の意識が覚醒したことの確認として、俺は皆に挨拶をする。


「おかえりなさい。そしてようこそ我が家へ」

 

 とにかく先ずは戦力の確認と現状の整理。

 いつもの事だが、一戦終える毎に情勢は変化しているし、次の試合についての対策や、方針の修正など考える事は山積みだ。


 俺は最初に、新しく『ファミリー』に迎えた彼女について話し合うことにした。

量的には1話に纏めても良さそうだったんですが、内容的に2話で良いかなと思って今回は少なめ。


先に出来ていた2話目も後ほど投稿します。

折角なんで、意地悪く時間差を付けて昼12時に予約投稿しようw


あれ?ただでさえ少ない読者様の足が遠退いてゆく音が聴こえる……

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