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ファミリースポーツ・オンライン  作者: Dちう
剛腕!ファミリー・アームレスリング
31/68

ドキッ!女だらけの腕相撲大会

移動先は前回のような野外競技場ではなく、人工的な白い蛍光灯の明かりが灯された屋内のあまり広くない部屋だった。


部屋の中央にはグリップバー、エルボーパッド、タッチパッドと思しきものが1組ずつ取り付けられたアームレスリング専用の競技台が置かれているだけで他には机も椅子もない殺風景な部屋だった。

観戦は立ち見でしろと言う事だろう。

下手に座席があって大人しく座って見るよりも、競技者との距離が近くなる立ち見の方が観戦に力が入り盛り上がるに違いない。

台の側には前回と同じ装いの審判キャラクターが立っている。

今回は2名。事前情報通りならば主審と副審だろう。


そのように中をあちこち見回していると、俺達と競技台を挟んで反対側に突然扉が出現する。

音も無くスッと開いた扉から相手『ファミリー』が現れた。


最初に扉をくぐって出てきたのは、短い髪をピンクと青のまだらに染め分けた大柄な女性だった。

大柄と言ってもアスリート然とした筋肉質な太さは持ち合わせていない。

まるでモデルのようなスラリとしたプロポーションで背筋もピンと立ち、立ち姿だけでも絵になる。

顔は…まあ一言で言えば不細工ではある。

ギョロリとした大きな瞳がギラギラと不気味に輝き、あばたが浮いた顔は不細工ではあるが、何か人の目を引き付けて離さない魅力とか迫力のようなものを感じる。

元々女性に苦手意識のある俺は勿論だが、多分他の誰が見ても俺同様に圧倒されるだけのオーラが放たれている。


こちらの存在に気付いた彼女が大きく釣り上がった瞳で睨みつける視線と俺の視線がぶつかる。

野生の肉食獣のように静かで研ぎ澄まされた鮮烈な意志が、俺の脳髄を貫く。

この緊張感溢れる雰囲気や自然な容姿は人の手で作れるような類では無く、また作ろうと思って出来るようなものでも無い。

十中八九天然モノだと確信する。


完全に存在感に呑まれてしまっていることを察したのか、彼女はフッと笑って視線を外し、競技台と審判の方に向気直り歩き出す。


「何を立ち止まってるんだぃ?早く進んでくれないかなぁ。」

金髪の催促でハッと我に還る。


競技前から呑まれてしまってどうするんだ。

相手が獣であるならこちらも気迫で負ける訳にはいかない。

俺も彼女から僅かに遅れて競技台へと向かう。


彼女が扉を潜り終えると続々と他のメンバー達も続いて入場する。

流石に最初の野獣のような女程にインパクトのあるプレイヤーは他にはいなかった。

女性ばかりのようだが、どれもVR整形済みの人工臭さが出る美形ばかりで、野獣を見た後だけにそれが異常なまでに際立って不自然に見える。


美醜というものについての蒙が啓かれるような体験であった。


「すごいねぇ。あんなに良い意味で存在感のあるブスは中々いないよ。」

金髪もどうやらあの野獣が気になるらしい。

堂々とブスと言ってしまえる辺りに彼の女性観が窺える。


「あの迫力、君が身構えてしまったのも仕方ない事だねぇ。それともハートにズギュンって感じかなぁ?」

恐ろしい事をのたまって下さるが、あれに恋とかありえません。

俺の好みは年上で包容力のある胸の大きな…これは抗議が必要だな。


「そういうんじゃないです。あんな怖そうなの好きになる人は趣味が悪いですよ。」

「解ってないなぁ。ああいう女はかなりモテるんだよ。」

そんな事は解りたくもない。

金髪はかなり特殊な女性観を持っているようで、俺とは相容れない。

下世話な話が好きな体育会系には付き合っていられないので話題を変える。


「それにしても全員女性というのも凄いですね。」

体格や見た目の年齢の幅こそあれ、全員が女性型アヴァターである。


「まあVRだし、見ただけではまだ何とも言えないけどねぇ。」

スポーツゲームということで、参加者の間口は広い。

普段ゲーム等には手を出さないような層も参加しているのがこの『ファミリースポーツ・オンライン』だ。

仮に全員が中身も女性であったとしてもおかしくは無い。


「それにしても競技がアームレスリングと判っているのに、腕力で不利な女性のみの『ファミリー』で参加するって怪しくないですか?」

競技は前以て判っているし、パスして次の競技に賭ける事もできる。

不利と解っていながらも参加する以上、彼女達には何か裏があるかもしれない。


「そんなことを言えば『リレー』も競技者でも無ければ、女性は割と苦手だよぅ。」

現にこちらのメンバーの雄雄しき少女も内股走りだった。

彼女があれだけ走れたのは、あの体格の持つストライドの長さと、彼女の必死オーラに気の弱いプレイヤーが圧倒されていたからだ。

基本的にスポーツにおいて訓練の度合いが同じ程度であれば、最後にモノを言うのは体格だ。

体格の差が乗り越え難いからこそ、競技には階級というものが用意されている。

しかしここでは『ファミリー』で参加するのが前提なので、階級システムは用意されていない。

もしかしたらハンディキャップが用意されているかもと思ったが、先ほど『ファミリー・ルーム』でマリオンに問い質したところ、アヴァター作成で対応する為、ルール的なハンディキャップはほとんどの場合適用されないという話だった。


「でしたら彼女達も負けて進む為に試合をするつもりでしょうか?」

「どうだろう?それなら女性だけで組むというのはリスクが高すぎるねぇ。」

可能性としては充分有り得る。

しかし最終的に勝てる見込みも無しにそれを行うのは自殺行為であるから、金髪が否定するのも肯ける。


2人で考えるだけでは埒が明かない。

競技前か競技中に相手とコンタクトを取って話し合う必要がある。


審判に集合するように促された俺たちは競技台の前に集まった。


「ようこそ『ファミリー・道場』へ!今競技『ファミリー・アームレスリング』は、主審と副審の計2名で審判を勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします。」


前回同様に審判達がお辞儀をするが、今回は誰も拍手をしなかった。

顔を上げた副審がこころなしムスッとして競技の説明を始める。


「『ファミリー・アームレスリング』は、こちらの専用アームレスリングテーブルで6人の勝ち抜き方式で対戦していただきます。」とテーブルを指差す。


「この競技の勝利条件は相手『ファミリー』全員に勝利することです。敗北した『ファミリー』にはトレード権が与えられます。トレードの手順は通常通りです。」


予定通りだ。

勝つつもりは無いので、今回も既にトレードに出す子供を決めてある。


「それでは皆様お待ちかねの、総観戦者ポイントを発表します。」


前回は250万ポイントだった。

6『ファミリー』合同競技ということもあったので高かったのだろう。

競技者が6分の1になったので、単純に予想すれば6倍で1500万ポイント。

これが円だったら中堅野球選手の年俸ぐらいだな。


「総観戦者ポイントは…3,380,740ポイントです。」

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