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ファミリースポーツ・オンライン  作者: Dちう
疾走!ファミリー・リレー
26/68

敗北競争

バトンを受け渡す際に落としてしまった場合、渡す側の走者が拾ってレースを続行することができるが、受け取る側の走者が拾うと、バトンを投げ渡したと見做され失格となる。


そう、あの時俺はバトンを拾えば失格する事は知っていた。


では何故知りつつも拾ったのか。


俺の目的は、子供たちを生還させつつ最終戦まで残る事。

金髪『ファミリー』は敗北による残留を狙っており、メンバーの充実ぶりを見る限り、恐らくトレードをしないだろうという確信に近い予感があった。


仮に俺が1着になったとしても、彼らは何かしらの理由をつけて結局トレードをしなかったはずだ。

トレードの選択権は敗北者にある。

あちらが「しない」と言ってしまえば、その時点で俺は目的を達成できない。

もちろんその結果、今ここにいる5人の子供をを生還させることは出来る。

しかし、人に預けた3人の仲間が必ずしも全員生還できているとは限らない。

俺は、あいつらが帰れたという確証が得られるまで、このゲームを抜けるわけには行かないのだ。


だから金髪『ファミリー』の目的が知れた時点で、俺は金髪を出し抜いて敗北せざるを得なくなったのだ。


幸いな事に、金髪たちは大きなミスを犯していた。


負けて次に進むつもりならば、確実を期して最初から違反による敗北を狙うべきだった。

他にも強そうな『ファミリー』や、同じ目的の敵がいると知れたら彼らもそうしていたに違いない。

しかし今回、俺たちも含めた他の『ファミリー』は彼らほど強靭なアヴァターを持たず、生還を優先して先を争って走り出した。


それを見て彼らは油断したのだ。


軽く流して走る事で、今後の為にアヴァター調整を行うつもりだったのかもしれない。

もしかしたら必死に先を争って走る俺たちを見て、優越感に浸っていたのかもしれない。


そう。彼らは最初から負けるつもりだったが故に、余裕が有り過ぎたのだ。


だが、俺もまた大きな間違いを犯していた。


金髪『ファミリー』の様に、賞金の為だけに集まった集団が存在する事を考えから外していた。

自分達が仲間集めに苦労した為か、他の『ファミリー』にも一人ぐらいは帰還希望者がいるだろうとか、情に訴えかければ一人ぐらいは交代してくれるだろう、なんて事を考えている事自体が甘過ぎた。


目的を達しつつ子供たちを救う為には、絶対に勝利してはいけないのだ。


負けて次に進むのを確定した上で子供をトレードで減らすのが確実で唯一の方法。

とりあえず勝って子供の安全を確保した上で、相手がトレードを持ちかけてくるのを期待するのは、不確実で危険な賭けでしかない。


金髪にトレードの件を持ちかけ断られた時、俺は自身の甘さと失策に気付いた。

ひやりと焦ったが、同時にここで気付けたのはラッキーである事にも気付いた。


この時点では、まだ金髪は油断している。

しかし交渉の為とはいえ、事情を話してしまったのは不味かった。

そのまま放置していれば、いずれ金髪も俺が同じリングに上がってくると想像してしまうだろう。

そうなってしまえば『敗北を競う』争いに発展する。

露骨に負けを競う展開を相手に意識させてしまうのは不味い。

恐らくその気配を感じた時点で、金髪が先に何らかの違反を犯して敗北する可能性もある。

元々陸上競技者であった彼には競技に対する完璧な知識があり、どんな手を使って負けに来るか判ったものではない。もしかすると、俺が知らない簡単な方法で失格できるものがあるかもしれない。


金髪に意図を悟られる前に先手を打って失格しなければならなかった。


審判に棄権を申し出るという方法も考えたが、もしそれが受け入れられなかった場合、金髪に俺が負けようとしている事を悟られてしまう。


そこで俺は、金髪に悟られぬように一つ芝居を打った。

あの賭けである。


あの賭けは別にトレードを目的として提案したのではない。

俺が1着による『勝ち抜け』を狙っているように印象付ける事が目的だった。

あの発言を意識させる事で、『負けを競う』という選択肢が金髪の中で消えたのだ。

まさか俺が5人の子供が生還できるチャンスを捨てるとは思わなかったであろう。


金髪は勝者の傍観者たることを継続した。


あとはどうやって自然に失格になるかだ。

いくつかの方法を検討していたが、事前に負けるための打ち合わせを行っていたわけではないので、他のメンバーに失格を促す事はできない。


失格の方法としてリレーゾーン外でのバトンタッチを考えていたのだが、事故を装うのは事前協議なしでは難しく、他に確実な手はないかと考えていた矢先に幸運にもクラッシュが起き、バトンが転がり込んできた。


そして一生懸命過ぎて周りが見えなくなっている様に見せかけ、タッチ前のバトンを拾う違反を犯した。


故意ではない態を装う為に失格になってもゴールを目指して走っておく。

最後まで走りきり、ゴール地点で再度主審に失格を宣告され、ガックリと落ち込むフリをした。


敗北を掴み取った。

あとは勝者が決まるのを待つだけだ。


この章全部書き直そうかな…

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