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ファミリースポーツ・オンライン  作者: Dちう
疾走!ファミリー・リレー
24/68

金髪たちの思惑

第3走者は我が『ファミリー』最大の不安要素、迷子君だ。


何かと慌しく時間が無かったので、俺とはあまり親睦を深める事はできなかったが、子供たち同士では衣装替えや食事にバトンタッチの練習と共同作業を行う次第に打ち解け仲良くなっていた。

親と会えない不安で心細かろうが、寂しさに耐えて取り乱さず良く頑張っている。


彼への負担をできるだけ軽減する為に、大勢に影響が少なそうな第3走に指名したのだが、偶然の結果とは言え僅差のトップを託すことになってしまった。とてつもないプレッシャーであろう。


それでも彼はその重圧を撥ね退けて、見事にバトンをキャッチした。

練習以上にスムーズさで、リレーゾーン内では完全に他を圧倒している。


しかし大人たちは確実にバトンを繋ぎ、確実に距離を詰めていく。

一度ゾーンを抜けてしまえば完全に子供を圧倒する走りを見せる。


やがて直線の中盤を過ぎた辺りで、一人の大人が横に並び、追い越し、前に出た。

平均的な体格なれど、子供にとっては巨人に等しい身体にコースを塞がれ、継いで抜かしにかかった外レーンの大人たちに囲まれてしまい、有利なはずのコーナーを生かす事ができない。


試合に負けるのは構わない。元よりそれも計算の内だ。

しかしあの展開は偶然だろうとは思うが、巨体で圧迫していじめている様にしか見えない。

見知らぬ大人たちに囲まれて心細かろうに、それでも歯を食いしばって走る姿に感動と、助けに行けないもどかしさを覚える。


そんな俺の葛藤を察したのか、隣の金髪がまた話しかけてきた。

「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても君たちは全員帰れるからさぁ。あの子はまだ最下位じゃないだろぅ?」


確かにやや離れて後ろにまだ一人の走者がいる…ゼッケンの色から見るに金髪の『ファミリー』だったはずだ。

彼らは一様に剛柔の均整のとれたギリシャ彫刻の様に美しい肉体が特徴的で、走力に問題を抱えているようには見えず、むしろかなり速そうに見える。


最後尾を走る男は、第1・2走のメンバー同様に軽く流す感じで最後尾を付かず離れずの位置をキープして走っている。他ならぬ自分の『ファミリー』が最後尾を走っているのに、走者も彼も何故こんなにも焦りが見受けられないのだろうか?


何か言おうと思ったのだが、試合がコーナーを抜けて次のリレーゾーンに到着する展開に入ってきたので、特に返事をせずにそのままスルーする。


気を悪くさせたかなと思って横をチラリと確認したが、特に金髪には気にした様子も無い。

むしろ子供に向かって「頑張れ少年!あともうちょっとだーッ!」と声援を送ってくれている。


囲んだ瞬間に露骨にニヤニヤし始めた他の『ファミリー』の最終走者たちと違って、金髪にはとても好感が持てた。



第三走者がリレーゾーンにほとんど団子の状態で到着する。

副審がプレイヤーを順位に合わせて内から並べる。

俺の『ファミリー』は現在5番手。


それでも一生懸命に迷子の子は走り、最後の力と息を振り絞って「ハイッ!!!」と大きな声でバトンを渡す。

そのまま慣性でフラフラと2歩・3歩と進み、力尽き転倒しそうになるところを、バトンタッチを終えた金髪『ファミリー』の第3走者が優しく抱き止めてくれる。


俺たちの第4走者は、後ろを振り向かずに自然な挙動でバトンを受け取ると、一気にスピードを上げた。

後ろで起こっていることに気付いていないはずは無い。

それでも、あの子の頑張りへ応える為には、躊躇うことなく走ることだとアイツは解っているのだ。

アイツなら、迷子の子の想いを力に換えて走るに違いない。


安心した俺は、金髪に感謝の意を告げる。


「ありがとうございます。応援だけでなく介抱までして頂けるとは思っていませんでした。『ファミリー』を代表してお礼申し上げます。」深々と頭を下げる。


「あの子は良く頑張ったねぇ。後でちゃんと褒めてあげるんだよ。」

「はい!必ず。」

「君たちの頑張りを見てると私たちもやるぞ!!って気持が湧いてくるからねぇ。あいつもきっと感動したんだと思うよぅ。私達が負けるのにも意義があるというものさぁ。こちらがお礼を言いたいくらいさぁ。」


負ける意義?何かおかしいと思っていたが、やはり負けを狙っていたのか。

だがこれはチャンスだ。

この競技で最良の結果は、子供たちが全員生還し、俺が敗者からトレードで引き抜かれる事だ。

つまり今回の交渉相手は金髪『ファミリー』ということだ。


俺は、恐らくこの勝負の肝になるであろう交渉を始める。


「もしかして負けて次の試合に進むつもりなんですか?」

「ん?ああ、そうだよ。私たちは高額賞金を目指してしばらく負けるつもりなんだ。」


間違いない。ならば俺が彼に言う事は決まっている。


「俺は人数の都合で別れざるを得なかった子供たちが、生還できているかを最後まで残って確認しなければなりません。ですからこの競技が終ったら、トレードで俺を貴方の『ファミリー』に入れては貰えませんか?」


このトレードで彼らに利益は無いが、競技中の彼らの爽やかさを見るに、応じてくれる可能性はあると思った。


「残念だが、それは出来ないねぇ。高額賞金獲得の為に集まったメンバーだから、こんなところで帰るわけにはいかないよ。君たちの素質や気概は賞賛に値するが、実際に勝負どころを任せることは出来ないし、先にも必ず帰れる保障は無い。帰れる時に帰っておきな。大丈夫、子供を見かけたら帰らせるようにするからさぁ。」


善意で言ってくれてるのが判るだけにもどかしい。

どうやら説得を続けようにも翻意を促すのは難しそうだ。


かといってこのまま指を咥えて見ているだけでは俺の目的は達成できない。

それに彼らの目的が賞金である以上、そこそこで切り上げてしまう可能性も否定できない。


こうなったら、最終走で彼と勝負するしかない。


「俺の実力に不安があるんですよね…最終走で俺が一着になったら、そちらで一番弱い人とのトレードを考えてもらえますか?」


今のところ第4走のワルガキが健闘して、順位は4位に浮上している。

コーナーで前のプレイヤーが外に膨らみ、内が空いたところを上手く突いたようだ。

ここを抜けたら次は第5走者の待つリレーゾーンだ。


「それは私の一存で決めるわけにはいかないねぇ…だけど、もし君が1着になれたら皆と相談してみよう。」


確約はしてくれなかった。

しかし、それで十分だ。それこそが俺の求めていた答えだったのだ。


「ありがとうございます!」


そして遂に第5走者たちにバトンが渡った。


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