救世主伝説
拠点に到着すると、そこでは順調に里子・里親選びが進んでいた。
新規に送られて来る子供も年少者・女の子・アヴァター改造・保護者あり、などカテゴリー分けされ、各カテゴリー毎にボランティアが担当して対応してくれていた。
出て行く前はここまでシステマチックではなかったので、協力者の誰かが事業仕分けしてくれたのだろう。
「さあ、着いたよ。起きて。」身体を揺すって、背中の少女(?)を起こす。
「ん、おはよう。おにいちゃん。」目を覚ましたので、背中から降りるように指示する。
「そういえばまだ訊いてなかったけど、年はいくつかな?」まだ幼かったような印象を受けたので、訊ねておく。
「あたし、5さい。」まだ園児か。
となると保護者がこちらに来ているはずだ。
「このゲームへ一緒に遊びに来たのは、お父さん?それともお母さん?」
「おとうさんとおかあさん。」やはり保護者がいるのか。
それならば、保護者アリの子供たちのところに預けるかな。
「それじゃあ、一緒においで。あそこでみんなとお話しながらお母さんに迎えに来てくれるまで待っていようね。」と、保護者ありの集団を指差す。
「うん!あたし待ってる…おにいちゃんも一緒にいてくれるよね?」もの凄い力で俺の腕を取り、ウルウルと厳つい瞳を見開き潤ませて、俺を見詰める。
怖いし痛いし目立つし誤解されるから止めて欲しい…嗚呼、周囲の視線が痛い。
俺は俺を慕うガキ共を助けるという使命がある。それに一刻も早くこのおぞましい状況から抜け出したい。
「ごめんな。おにいちゃん、他にも助けないといけない子が沢山いるんだ。ここなら他にも同じぐらいの年の子がいっぱいいるし、寂しくないだろ?」腕にしがみつく(傍目には関節技を掛けている様にしか見えないだろう)少女を優しく(傍目には強引に)引き剥がし、頭を手でポンポンと優しく叩いてあやした。
引きとめても無駄だと理解したのだろう。少女(?)は俯きながら寂しそうに「うん、わかった…」と肯いた。
やましい気持と罪悪感で胸が締め付けられるように痛くなったが、優先すべき事があるのも事実だ。
俺は俺の役割を果たした。後は次の人にお任せしよう。
少女(?)を子供達の下へ連れて行くと、担当者らしき男に声を掛けられた。
「お子さんをお探しですか?こちらでは迷子のお子さんをお預かりしています。」
「いえ、迷子を預かって欲しいんです。」
「わかりました。それでそのお子さんは何処にいるんです?」辺りを見回す担当者…ああそうか、まあ判るわけないわな。
俺は隣の少女(?)を指差して「この子です。」と告げた。
さぞかし驚く事だろうと内心リアクションを楽しみにしていた。
「ハァ!?何をふざけて…ああ、なるほど。この子が通達のあった子ですね。」意外と話が早かった。
ここの人達はホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)がしっかりできている様だ。
ちょっと残念だったが、余計な説明が要らないのは助かる。
「ということは、君がハルオ君ですね。名乗りが遅れましたが、私は『アベルカイン』と申すものです。」あれ?もしかして俺って有名人?だとしたら…照れるぜw
俺が恐縮していると『アベルカイン』氏はとんでもないことを言い始めた。
「君の活動を聞いて感動しまして、なんとかお手伝いができないかと思って馳せ参じました。お会いできて光栄です。皆が君の献身的な行動に感謝しています。ここにいる人は皆、君のことを『救世主』と呼び、崇め奉っていますよ。」
きっと冗談だろうが、いつの間にか俺は『救世主』とやらに祭り上げられているようであった。
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すいません、やちゃいましたw
こっちが煮詰まった時専用なので勘弁して下さい。