表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファミリースポーツ・オンライン  作者: Dちう
『ファミリー』
13/68

里子

助けを求められて全く反応しない人は少ない。

ほんのわずかでも、力を貸してくれることはあるのだ。

例えば募金活動の時に1円玉を寄付してくれるような。そんな助けでも良いのだ。


だが、ただ泣き叫んで助けを求めても現状では逆効果になる。

子供の泣き声は、問題の発生を気付かせる効果は高いが、全員が混乱している大規模災害時のような現状では、『避けるべき問題』や騒音と捉える人の方が多い。

『溺れるものを助けようとすれば、自分もおぼれてしまう』という恐怖に勝てる人は多く無いだろう。


ならば先ずはこちらが落ち着いてみせ、その上で相手に訴えかけなければならない。


俺はワルガキ共に指示を出し、子供たちを組み分けして落ち着かせる。


俺に鍛え上げられてきたワルガキ共は手馴れたもので、組み分けをしてしまえば彼等が率先してリーダー役を努め、ものの数分で子供達をなだめて秩序を取り戻した。

こうしている間にも何人か増えていたが、それも見事に各自が誘導し組み入れ、落ち着かせていく。


…帰ったらあいつらに奢ってやらないとな。


現状、大人は俺一人(俺を大人と数えても良いものかはわからないが)。子供の数はおよそ50人ほど(現在微増加中)。この人数では1つの『ファミリー』に収まらない。


・子供だけで『ファミリー』を組ませる。

・引率を付ける為に最低10人の大人を集めて分散して『ファミリー』を組む。

・既に集まりかけている大人の『ファミリー』の隙間に子供を組み込んでもらう。


これらを併用して『ファミリー』編成するしかない。


幸い小学生未満の幼児はほとんどいない。

この年代の子供がプレイするなら、引率の年長者が一緒に来ているだろう。

迎えが来たらその人に頼んで何人か受け持ってもらえば良い。


小学生も大体は高学年なので、場合によっては子供だけで『ファミリー』を組ませるしかないだろうが、できればその事態は避けたい。

交渉役は必要だし、競技によってはルールの理解が難しいものもあるので大人の判断力が必要になってくるはずだ。


どの方法をとるにしても先ずは大人を確保しなければならない。


あまり悠長にしていると、大人たちの『ファミリー』集めが終ってしまう。


俺は子供たちの管理をワルガキ共に一旦任せ、他の大人たちを誘致する為に走った。




先ず俺が標的にしたのは、2~4人のまだ『ファミリー』を結成するにはちょっと時間がかかりそうで、尚且つ明らかにVR整形で肉体を改造している集団だった。


彼らは勝利自体への興味が薄く、出来るだけ長くゲームを楽しもうとするはずだ。

だから多少の不利等は意に介さないだろうし、むしろ最初のうちは喜んで負けるだろう。

彼らの意識に使命感を刷り込む事ができれば、子供たちをトレードによって一人ずつでも救ってくれるはずだ。


ストレッチしながらこちらを遠巻き身見ている、丁度手ごろな4人組が居たので、駆け寄ってリーダーと思しき男に「子供たちだけで困っています。助けたいのですが人手が足りません。協力していただけませんでしょうか?」と、声をかける。


予測していたのだろう。男は特に驚きもせずに返答した。

「ああ、見てたよ。凄い人数だな。俺たちもどうしようかと思っていたんだが、考えあぐねていてなあ。」


大丈夫、この答えなら脈アリだ!


「ええ、わかります。こんな状況ですもんね。」

「そうなんだ。助けてはやりたいが数が数だろ?一人二人ならともかく全員ってのはなあ。」


これも想定内で、ほぼ言質をとったようなものだ。


「それなんですが、その一人二人をお願いしても良いでしょうか?」

最初に全員は無理だがと断らせているし、2度目の要求は拒絶し難かろう。

その上でトレードによる救済を持ちかける。

相手にしてもそう悪い話では無いだろうし、元々何戦かは負けるつもりであったろだう。

その何戦かの間にトレードで自分達のご同類と子供を交換すれば戦力強化も図れるし、恐らく帰ったところで気分も悪くない。

子供を見捨てるというのは、かなり心理的に負担が掛かるやましい事なのだ。

俺と同じ様に、彼らにもまた、見栄から来る義務感があるはずだ。

俺はそこに賭けた。


「みんな?どうするよ?俺はこの話乗っても良いと思っているんだがな?」

「そうだな。どうせ俺たちもあと2人必要だし、こういうときは助け合わないとな。」

他の3名も概ね同意見のようで、快諾してくれた。


彼らと連れ立って子供たちの下に戻り、年の小さい子から順に2人選んでゆだねる。


最初はぎこちなかったものの、しばらく俺の仲介で話すと互いに打ち解け、絆のようなものが芽生えたように思える。

子供に頼られる事で、大人は義務感を触発され奮起する。

彼らならきっと子供たちを無事に帰還させてくれるだろうと確信できた。


そこで俺はもう一つの作戦に出る。ここまで来たら余程の事でなければ断られることは無いだろう。


「つきましてはもう一つお願いがあるのですが、他の人にもこの話を広めてもらえないでしょうか?」

一人で探していては時間が足りない。

こういうときは人づてで、話を広めるに限る。

更に言えば彼等という前例が話を進めてくれれば俺が言うよりも説得力があるはずだ。


―――予想通り彼らは快諾してくれた。


彼らに、競技で互いが遭遇した場合の注意事項を言い含め、俺は次の標的を求めて走り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ