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プロローグ:ようこそ新世界へ!!…

 世界が熱望した史上初となるVRゲーム機。

 その解禁日が遂にやってきた。


 通常、新技術の製品というものは驚くほどに高価格で、大抵大型で、初出荷数も極少なものだ。

 しかし公表されているスペックを見れば、あらゆる既存の電荷製品が比較対象にならない程に安価であり、小型で、初期出荷予定数も莫大なものであった。


 地球上どこにいても一瞬、かつ断線することなく情報が送受信できる通信システム。

 半永久的に稼動する新エネルギーによるバッテリー。

 限界まで小さくされたヘッドセット。

 携帯端末程度の本体サイズ。

 etc…


 それらが全て無償同然の価格で提供されるというのだから、『人類の強制進化』と言うキャッチコピーは伊達ではないだろう。


 公表されたテクノロジーの異常さと、あまりの利益度外視にマスコミや専門家達からは発売元へ多くの疑問が投げかけられたが「価格は全世界への爆発的普及を第一に目指したプロモーションの一環で、初回ロットのみのサービス。スペックに関しては実際に手にとってからお試しいただきたい」とだけ返答され、多くを語る事はなかった。


 その初期出荷数は全世界で数千万台というありえない台数であり、プロモーションの枠を遥かに逸脱しているのだが、これも「単なるゲーム機ではなく、付随する様々なサービスで回収が見込めるからこその価格」という発表のみがあり、人々の様々な憶測を呼んだ。


 同時発売ソフトは注目のタイトルが多く、有名ソフトメーカー各社が競って開発した渾身の作品揃いらしい。


 らしい、というのは開発中画面すら発表されず、タイトルとパッケージイメージとジャンル表記と開発社名しか公表されないからだ。


 この情報化社会において有り得ない秘密の徹底ぶり(SNSでもソースに信憑性のある情報が全く上がらない)だがやり過ぎである。


 しかもゲームは全てフリーウェアというのだから驚きである。

 ゲーム会社はいったいどうやって採算を得るのかと、これも様々な憶測を呼んだが、この件に関しても特に何ら公的な発表がされる事は無かった。



 世間では季節外れのエイプリルフールだと揶揄され、誰もが悪質なデマか詐欺であると語るが、これだけ多くの企業を巻き込んでいる以上、冗談では済まされないし、関係各企業が一様に「秘匿事項につきプロジェクトの内容は明かすことが出来ない」と発表すると、人々の期待感はいや増した。


 いざ満を持して予約販売が始まると、予約開始から数分も経たない内に数千万台が完売した。


 転売などが意味を成さないDNA情報を利用した購入者完全認証システム(そしてそれに付随する各種のややこしい手続き)であるにも関わらずだ。


 起動解禁日までには初回生産分の全てが購入者の手元に配送され、手にしたものは周りから羨望のまなざしを送られた。


 購入者しか使用できないにも関わらず何件かの窃盗・強盗事件も発生し、一番大きいものだと輸送中のコンテナごと数百台が強奪される事件まで起こった。


 しかしそれらは機動できないどころか即座に位置情報が警察などに発信され、あっという間に事件解決されたことにより、防犯能力や信頼性が世間に大きくアピールされた。


 自宅に届いた幸運な者たちは即座にフライングでこの人類未体験のゲームをプレイしようとしたが、簡易ディスプレイに解禁日までのカウントダウンが表示されている他は、ゲームのダウンロード、また解禁と同時にプレイするゲームの選択だけが可能であった。


 あらゆる手段でゲームを機動させようとしてもそれらは徒労に終った。


 ハッキングしようにもあらゆる既存の外部端末と互換性が無く、同ゲーム機同士でのみしか通信される事がない。


 物理的に解体しようとすると、即座に保安員から連絡が入り警告される。


 無視した場合は購入時の契約書に明記されている、およそ支払う事ができない金額の賠償と刑事罰(!?)を受けるという警告を受けるのだが、実際に無視した人物が即日逮捕されたと報道されるに到ってようやく世間も『とりあえず解禁時間を待ってプレイしてみてから賛否を問おう』という体制になった。


 全世界同時解禁時間が昼間の国では会社や学校を休むものが続出し、夜の国ではまるで年越しのように皆が解禁の時をカウントダウンする。


そしていよいよ訪れる解禁時間を世界中の人々が祝い、カウントを唱和する。


『5』


『4』


『3』


『2』


『1』


………


<<バツン!!>>



突然あらゆる感覚が消失し、全てが一度闇に沈む。


驚きと恐怖と混乱の中、やがてじわじわと自分が世界に馴染んでいくかのように、光と感覚が取り戻されてゆく。


……すると戻りつつある聴覚に、荘厳なファンファーレと共に無邪気そうな子供の声が飛び込んできた。




 『ようこそ新世界へ!そして始めましょう!デスゲームを!!!』




 全世界数千万ユーザーによるデスゲームがこの日始まった。

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