星々のリポジトリ
まだ苦しくない。今は実験の途中。君の理念の再生。星になって天に昇った君の抽象的蘇生。かつて空の吸収球体は君の魂を剥離した。だが、もう僕は君を渡さない。君はまだ死んでいない。まだ死んでいないんだ!だから……。
聖霊の梯子を駆け上がるその大気をマリファナと化合することで毒蜥蜴の揮発油を遮断できるだろう。これも錬金術理論の応用だ。聖塔の落書きにこう書いてあった。「死者は生き返る」と。そのための材料は以下の存在だ。ネオ・ダダ。不浄の火焔。月の硬貨。防禦態勢。真夜中の創造。抜け出せない鎖。そして永劫なる無理数。――もし精神の所有権を僕が放棄すれば君は天に解放されるのだろうか。けれど、僕の利己的な操作によって君の肋骨を切断するのだから、もういいじゃないか。もう少しだけ地上に残ってくれ。
言うなれば流星に似た大世界の鬱積は医療ミスの理由と同等の価値だ。咄嗟に君の顔が思い出せないけれど、死靈のプロトコルを辿ればきっと再び浮上するはずだ。だから待っていてくれないか。
私が霊界ラジオを握っているときに剥き出しの子宮を持つ天使が現れた。そしてピンクの唇を歪め「そんなに胃袋に氷を詰めてどうするんだい?」と発言した。眼光が三日月の如く鋭利だ。「君のすべては無意味ななんだよ。死者は黄泉がえらない」と言う。それきり、パタパタと飛び立っていなくなってしまった。蕭然と星は煌めいている。敬虔な山並み。微かに言語化された水面の揺らめき。エーテル麻酔。捻じれた愛を捧げよう。僕の罪悪の色相はどのような輝きだろうか。どうせ救われはしない。涙など流れない。首括りの丘。架空の罫線。星座の並び。自然の葬送歌。屍体の腐蝕。生首に似た楕円。
丸い箱の中に君はいる。温めると君は生まれる。
僕は待つ。ひたすら待つ。苦しくない。
そのあいだ、流星の軌跡を眺めよう。ほうき星の諧謔曲を。
嗚呼!ついに君が孵化する!これこそ待っていた。この現象を待ち続けたのだ。君よ。もうすぐだから。産まれ落ちよう。月の卵に罅が入る。闇のような穴から中からあのときと変わらない女性の姿が。右手の薬指にはキラキラ光る結婚指輪がある。ああ、彼女は口を開ける。喉奥から冷えた言葉が出た。
「あなた、はやく、許可して」
存在不確定の君の姿は屈折する。そのまま消える君の軀を眺める。燻る紫煙と化す君の心身は空間に溶けた。無。真実の死。――夜の遮光幕は除外され、朝焼けが射しこむ。神々しい煌き。僕は死ぬように眠る。もう、星は見えない。