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Bingata Legacy 〜時と海を越える遺志〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
9/20

第五話 炎上しない戦い方

炎上は、

声の大きさで決まるものじゃない。


冷静さを失った方が、

必ず負ける。


――これは、

尚継が「職人」である前に、

「戦う当事者」になる回。

「……来てるな」


継はスマートフォンを伏せた。


盗作商品を扱っていたアカウントは、

すでにコメント欄を閉じている。


「逃げに入った」


健太が言う。


「ここからは、向こうが不利だ」


彩乃は、冷静に画面を確認していた。


「感情的な批判は無いわね」

「証拠が揃いすぎてる」


継は、投稿文を再確認する。


・制作過程の時系列

・下絵の写真

・工房の作業風景

・型紙の細部


感情的な言葉は、

一切使っていない。


《事実のみを提示します》


それだけだった。



「……強いな」


健太がぽつりと言う。


「喧嘩じゃないからです」


継は答えた。


「守るための行動なので」



その時。


工房の隅で、

静かに様子を見ていた男が口を開く。


隆司だった。


腕を組み、

スマホ画面を見つめている。


「なるほどな」


誰に言うでもなく呟いた。


「若いのに、

 戦い方を知ってる」


健太が振り向く。


「隆司さん?」


隆司は笑った。


「昔な」


「職人は黙って腕で勝負だ」


「って時代があった」


少し間を置く。


「だがな」


継を見る。


「今は、腕だけじゃ守れない」


静かに頷いた。


「いいやり方だ」



数時間後。


盗作アカウントは


謝罪文を掲載し

商品を取り下げた。


だが、それだけではない。


彩乃がスマホを見て言う。


「見て」


仲村工房の公式アカウントに

新しい注文が入っていた。


挿絵(By みてみん)


一件、二件――


数字が増えていく。


「……増えてる」


健太が呟く。


継は画面を見ながら言った。


「信用は、積み重なるものです」


「でも」


少し笑う。


「一度、正しく守れたら」


「跳ね上がる」


健太と彩乃は顔を見合わせた。


この男は


ただの東京から来た若造じゃない。



沈黙。


隆司が、ふっと笑った。


「健太」


「彩乃」


二人を見る。


「分かるだろ」


健太が腕を組む。


「……ああ」


彩乃が小さく頷く。


健太が言った。


「合格だ」


「え?」


継が顔を上げる。


「仲間として、だ」


工房の空気が

少しだけ変わった。



その夜。


都内某所。

高層ビルの最上階。


挿絵(By みてみん)


男が夜景を見下ろしていた。


手元のタブレットには

仲村工房の記事。


《伝統工芸×SNS成功例》


男は小さく笑う。


「……いいね」


誰に向けるでもなく呟く。


「価値が、上がった」


その男の名を、

まだ誰も知らない。

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#政治要素あり #国際要素あり #史実ベース #フィクション
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