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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
外伝・林明浩編 ― スルメイカ社長の婚活 ―
45/139

【プロローグ】スルメイカ社長、婚活地獄

本編とは少し雰囲気の違う、

外伝コント回です。


林明浩リン・ミンハオという男が、

いかにして“婚活戦争”へと追い込まれたのか——


その“悲劇の始まり”を、

どうぞ軽い気持ちでお楽しみください。

林家。


その家は、静かだった。


挿絵(By みてみん)


だが——

その静けさは、

嵐の前触れに過ぎなかった。


「明浩」


低く、しかし逃げ場のない声が響く。


林明浩は、正座していた。

目の前には、祖母・林玉蘭(リン・ユーラン)


そして——


その背後の壁には、

若く、美しく、圧倒的な存在感を放つ

“全盛期の玉蘭の写真”。


挿絵(By みてみん)


(……今日も強い)


明浩は、心の中でそっと手を合わせた。


「婚活は、どうなの?」


来た。

避けられない一撃。


「……ええと、その、順調、です……」


「嘘ね」


即答だった。


「顔に書いてあるわ。“詰んでる”って」


「そこまで!?」


明浩は思わず声を上げる。

だが玉蘭は、微動だにしない。


「いい? 明浩」


静かに、しかし確実に追い詰める声音。


「林家の男が、三十を過ぎても独り身など——」


一拍。


「恥よ」


「ぐはっ」


見えない刃が、心に刺さった。


「で、どんな女性と会っているの?」


「えっと……普通の方、です」


「普通?」


玉蘭の眉が、わずかに動く。


「“普通”とは何?」


「えっ」


「説明して」


「えっ」


完全に詰んだ。


(誰か……誰か助けてくれ……)


脳裏に浮かぶのは——


ひとりの青年。

沖縄の工房で、黙々と布と向き合う男。


「……仲村継(なかむらけい)


ぽつりと、名前が漏れる。

玉蘭の目が、わずかに細まった。


「ほう」


空気が変わる。


「彼は、いい男ね」


「えっ」


「地に足がついている。

 流されない。

 そして——」


一瞬、玉蘭は背後の“若き自分”を見やる。


「“継ぐ覚悟”を持っている」


明浩は、何も言えなかった。


「明浩」


再び、視線が戻る。


「あなたに足りないもの、分かる?」


「……はい……」


分かってしまった。

分かってしまったからこそ、つらい。


「彼に、聞きなさい」


「え?」


「婚活のことを」


「いやジャンル違いすぎません!?」


「いいから行きなさい」


即決だった。


「彼なら、逃げない」


「いやでもあの人、職人ですよ!?」


「だからよ」


玉蘭は、微笑んだ。


「“逃げない人間”に、聞きなさい」


その言葉には、逆らえなかった。



その日の夜。

明浩は、スマホを握りしめていた。


挿絵(By みてみん)


メッセージ画面。

宛先:仲村継


(どう書く……?)


指が止まる。

震える。


(仕事の相談……いや違う……)


(婚活……って送るのか……?)


数分後。

ついに、送信ボタンを押した。


『相談があります』


短い一文。


だがそれは——

彼の人生を大きく動かす一歩だった。



数秒後。

返信が来る。


『いいよ』


それだけだった。


だが、その一言には——

妙な“安心感”があった。


そして同時に、

逃げ場のなさもあった。



――こうして、

林明浩の“婚活戦争”が始まった。


※このお話はここからでも楽しめますが、

第一部・尚継編を読むと


「あれ?この人こんな感じだったっけ…?」

「え、この人そんな関係だったの!?」


と、ちょっと見え方が変わります(笑)


気になる方は、第一話からどうぞ。

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