第二十三話 価値は、誰が決めるのか
展示を「宣言」しただけだった。
だが世界は、それを簡単には受け取らない。
仲村工房。
朝。
机の上には、いくつものスマートフォン。
健太が画面を見ている。
健太
「……また増えてる」
彩乃
「どれ?」
健太
「海外のニュース」
隆司
「こっちは投資ファンド」
彩乃
「紅型で?」
健太
「紅型で」
継は黙って聞いていた。
机の上には紅型。
あの布だ。
継
「……展示するって言っただけですよ」
健太
「世界はそう受け取ってない」
彩乃
「“発見された文化財”だから」
隆司
「しかも」
隆司はスマホを見せる。
見出し。
・匿名の買収打診
・海外オークション関係者
・文化財保護要求
継
「……」
健太
「宣言した瞬間、これか」
継は苦笑した。
継
「世界って暇なんですね」
健太
「いや」
隆司
「金の匂いがする」
沈黙。
継は紅型を見る。
その布を作った人物を思う。
尚造。
継
「……」
彩乃
「どうするの?」
継
「守るって言ったんだから」
一拍。
継
「守りますよ」
隆司
「簡単に言うな」
健太
「世界相手だぞ」
継
「知ってます」
継は椅子にもたれた。
そして天井を見る。
継
「……尚造さん」
健太
「?」
継
「あなた」
一拍。
継
「何者なんですか」
沈黙。
彩乃
「急にどうしたの」
継
「だって!」
継は紅型を指差す。
継
「布ですよ!?」
健太
「うん」
継
「紅型ですよ!?」
隆司
「うん」
継
「なのに」
継
「企業」
継
「国家」
継
「海外ファンド」
継
「全部動いてるんですよ!?」
彩乃
「そうね」
継
「普通、紅型で国際問題になります!?」
健太
「ならない」
隆司
「だが今なっている」
継
「でしょう!?」
継は立ち上がる。
継
「尚造さん!」
継
「あなた何者なんですか!」
沈黙。
継(涙目)
「何て物を残したんですか!!」
一瞬の静寂。
彩乃
「紅型です」
健太
「沖縄文化」
隆司
「あと世界情勢」
継
「重すぎる!!」
その瞬間。
遠く。
どこかで。
全員
「?」
継
「……今」
健太
「聞こえた?」
彩乃
「気のせいじゃない?」
隆司
「尚造の霊か」
継
「やめてください」
爆笑。
空気が少しだけ軽くなる。
しかし、
健太のスマホが鳴る。
健太
「……来た」
継
「何が」
健太
「輸送の問い合わせ」
彩乃
「もう?」
健太
「展示するなら」
隆司
「沖縄から東京へ運ぶ必要がある」
継
「……」
継は考える。
文化財輸送。
保険。
警備。
そして。
継
「……」
継
「ジョン」
隆司
「嫌な予感」
継
「軍用機って便利ですよね」
健太・彩乃・隆司
「「「帰れ」」」
継
「まだ何も言ってません!」
その頃。
沖縄。
米軍基地。
ジョン・スティーブンス。
ジョン
「……風邪か?」
彼は気づいていなかった。
自分が
とんでもない輸送作戦に
巻き込まれることを。
⸻
守ると決めた瞬間、
敵は増える。
だが、
味方もまた
増えていく。
⸻
(第二十三話 了)




