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Bingata Legacy 〜時と海を越える遺志〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
26/40

第二十二話 文化は守るだけでいいのか

文化は、

誰のものなのか。


作った者か。

守った者か。


それとも——

未来の人間か。


公開対談の翌日。


今度は、

文化人たちが決断する番だった。

東京。

国立博物館。

 

会議室。

長いテーブル。

その周囲に座るのは——


文化人。

研究者。

学芸員。

そして、博物館の幹部たち。


空気は重かった。


テレビの画面には

昨夜の対談が映っている。



継の言葉。


「2045年」


「沖縄戦から100年」


「その年に紅型を展示します」



再生が止まる。


沈黙。


一人の教授が言う。

「……理想論だ」


別の研究者が言う。

「文化は保存されてこそ意味がある」


「公開しない文化は死ぬ」


頷く者もいる。

しかし、別の声。


「しかし」


「仲村家は守ってきた」


「それは事実だ」


議論が始まる。



「公開すべきだ」


「いや、慎重に」


「林の計画は商業的すぎる」


「しかし国際的評価は必要だ」



議論は続いた。

一人の男が黙って聞いていた。


御厨正道。

文化財法の教授。


彼はゆっくり言う。

「法律の話をしましょう」


部屋が静まる。


御厨は言う。

「文化財は、守ることが優先です」


一拍。


「公開は義務ではない」


研究者が聞く。

「では、仲村家は正しい?」


御厨は答える。

「少なくとも、違法ではない」


ざわめき。


その時。

女性の声。


挿絵(By みてみん)


「でも」


全員が振り向く。


リン・チャン。

彼女は言った。


「文化は」


一拍。


「法律だけでは守れません」


沈黙。


チャンは続ける。


「紅型は、沖縄の文化です」


「そして」


「世界の文化でもある」


教授が聞く。

「なら公開すべきだと?」


チャンは少し笑った。

「いいえ」


沈黙。


チャンは言う。



「時間です」



全員が見る。


チャンは言った。


「仲村継は」


「時間の話をしていました」


「2045年」


一拍。


「沖縄戦100年」


部屋は静かだった。


チャンは続ける。


「文化には、節目があります」


「その節目で公開する」


一拍。


「それは」


「とても文化的な考えです」


御厨が小さく頷く。


研究者たちは考える。

そして、博物館長が言った。


「結論を出しましょう」


沈黙。


そして。



「紅型の展示計画」


一拍。


「条件付きで承認します」



ざわめき。


「条件とは?」


館長は言う。


「2045年」


部屋は静まった。


館長は続ける。


「沖縄戦100年」


「その節目で」


「国立博物館が展示を支援する」


沈黙。


そして。

拍手が一人。

また一人。


会議は終わった。



その頃。


東京。

高層ビル。


林明浩はニュースを見ていた。


テロップ。


【紅型展示計画

 国立博物館が支援】


挿絵(By みてみん)


林は静かに笑う。

「……なるほど」


鷹宮アレクが言う。

「彼は勝ったようですね」


林は言った。

「いいえ」


窓の外。


夜の東京。


「これで」


一拍。


「本当の勝負が始まる」



夜は

まだ終わらない。



(第二十二話 了)


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