第二十一話 公開対談 ―すべてが覆る日―
ここから、逆襲。
これは、対話ではない。
決着だ。
東京。
大型スタジオ。
観客席。
カメラ。
ライト。
そして——
巨大スクリーン。
テロップ。
⸻
「紅型は公開されるべきか?」
⸻
スタジオは満席だった。
文化人。
研究者。
メディア。
そしてSNSで集まった観客。
ざわめき。
司会者が言う。
「本日は特別対談です」
「紅型の公開問題について、
お二人に議論していただきます」
スクリーンに映る。
⸻
林明浩。
巨大企業の若きトップ。
文化事業の支援者。
そして。
もう一人。
仲村継。
紅型職人。
⸻
会場がざわめく。
「若い…」
「本当に本人?」
「職人?」
SNS実況。
コメントが流れる。
【仲村家の人だ】
【文化独占】
【説明しろ】
⸻
司会者が言う。
「ではまず、林明浩さん」
林は微笑んだ。
完璧な笑顔。
「ありがとうございます」
落ち着いた声。
「私は文化が好きです」
「だからこそ」
「紅型を世界に紹介したい」
拍手。
林は続ける。
「しかし現在」
「紅型は仲村家に保管されています」
「展示もされず、研究も進まない」
一拍。
そして言った。
「文化は共有されるべきです」
観客席。
拍手。
SNS。
【正論】
【林さんすごい】
【仲村家どうする】
⸻
司会者。
「では仲村さん」
継は静かにマイクを取った。
沈黙。
観客が見る。
継は言う。
「林さん、一つ質問いいですか?」
林は笑う。
「どうぞ」
継は言った。
「紅型の価値」
「いくらだと思います?」
会場がざわめく。
林は少し考える。
「文化に値段はありません」
継は頷く。
「でも」
「あなたは値段を知っていますよね」
沈黙。
継は言う。
「あなたの会社」
「文化ファンド」
「文化資産投資」
観客がざわつく。
継は続ける。
「紅型の市場価値」
「数百億」
林の目が細くなる。
継は静かに言う。
「だから欲しい」
「違いますか?」
会場。
どよめき。
SNS。
【え】
【マジ?】
【投資案件?】
⸻
林は笑った。
「誤解です。
私は文化を守りたい」
継は言う。
「本当に?」
林は言う。
「もちろん」
「仲村家が長年隠したせいで」
一拍。
「紅型の価値は、
天文学的に上がった」
沈黙。
その瞬間、
継の目が変わった。
「……今」
継は言う。
「なんて言いました?」
スタジオが静まる。
林は言う。
「事実です」
「市場は価値を評価します」
継は立ち上がった。
会場がざわめく。
継は言う。
⸻
「紅型は」
静かな声。
「株じゃない」
沈黙。
継は続ける。
「祖父が作った」
「沖縄の文化です」
一拍。
「あなたの投資商品じゃない」
⸻
会場。
静寂。
SNS。
【……】
【空気変わった】
司会者が慌てる。
「仲村さん」
「では、公開する意思は?」
継は言う。
「あります」
会場。
どよめき。
林の目が動く。
継は言った。
⸻
「2045年」
観客が静まる。
継は続ける。
「沖縄戦から100年」
会場。
静寂。
「その年に」
継は言った。
「紅型を展示します」
⸻
観客。
騒然。
SNS。
【え】
【100年】
【沖縄戦】
継は続ける。
「その日まで」
「紅型は」
「沖縄の時間です」
一拍。
「誰のものでもない」
⸻
沈黙。
スタジオ。
完全な静寂。
林明浩は継を見ていた。
そして、小さく笑った。
「……面白い」
林は言う。
「では」
「その日まで」
一拍。
「世論はどう思うでしょうね」
スタジオの空気が凍る。
継は答える。
「それを決めるのは」
観客を見る。
「文化です」
⸻
沈黙。
そして。
拍手が一人。
また一人。
やがて。
スタジオは拍手に包まれた。
しかし。
林明浩は拍手していなかった。
彼は鷹宮アレクに言う。
「いい」
そして。
「戦いになった」
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夜。
戦いは、
まだ終わらない。
⸻
(第二十一話 了)
※作者より
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