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Bingata Legacy 〜時と海を越える遺志〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
24/36

第二十話 炎上 ―守るものを選べ―

文化は、守れば叩かれる。

売れば、また叩かれる。


SNSは、

いつも正しいとは限らない。


だが——

そこには「声」がある。


そして今、

その声が、継に向けられていた。

沖縄。

仲村工房。

 

夜。


健太がスマホを見て固まっていた。

「……継」


継は振り返る。

「どうしました?」


健太は画面を見せた。



SNSの画面。

無数の投稿。


【#紅型隠蔽】


【文化を独占するな】


【仲村家は売る気がない】


【だったら国に寄贈しろ】


【文化泥棒】



継は黙って画面を見た。


彩乃が言う。

「……こんな」


ジョンが腕を組む。

「派手にやられてるな」


健太が言った。

「テレビでも流れた」


「林のインタビュー」


継はテレビを見る。


挿絵(By みてみん)


画面の中。

林明浩。

落ち着いた声。


「文化は共有されるべきです」


「一部の家に独占されるべきではありません」


スタジオが頷く。


キャスターが言う。


「確かに」


「展示しない理由は、

 説明されていませんからね」


画面の下。

テロップ。


【紅型を隠す仲村家】



工房。

沈黙。


彩乃が言う。

「……ひどい」


ジョンが苦笑した。

「政治の基本だ」


「敵を悪者にする」


継は静かに言う。

「……なるほど」


健太が怒る。

「なるほどじゃないだろ!

 これ全部嘘だぞ!」


継は少し笑った。

「嘘じゃないですよ」


三人が驚く。


継は言った。

「僕たちは、

 確かに隠しています」


沈黙。



継は工房の奥へ歩く。


古い棚。

一冊のノート。

革の表紙。


そこには書かれている。

「美咲」


継は静かにページをめくる。


古い字。

丁寧な筆跡。


『もし、この紅型を見つけた人へ』


継の手が止まる。


『この紅型は、

 すぐに世に出してはいけません』


挿絵(By みてみん)


継は小さく呟く。

「……やっぱり」


ページをめくる。


『紅型は美しい文化です』


『だからこそ、

 人は必ずそれを利用します』


継の目が動く。


『政治』


『金』


『名誉』


ページの文字は続く。


『紅型は、

 そのどれにも使われてはいけません』


継は静かに読む。


『だから私は、隠します』


次のページ。



『もし公開するなら』


継の呼吸が止まる。


『戦争当事者の声が小さくなった時』



工房。


継は目を閉じる。


彩乃が言う。

「……継?」


継は振り返る。

目は静かだった。


「理由がわかりました」


健太が聞く。

「何?」


継は答える。

「美咲さんは、守っていた」


一拍。


「紅型じゃない」


沈黙。


そして。


「沖縄の時間を」


ジョンが言う。

「……どういう意味だ」


継はノートを閉じる。

そして言った。


「林明浩は、

 急ぎすぎている」


継は外を見る。


夜の海。

遠くで波の音。


「でも、美咲さんは違う」


静かに言う。


「待っていたんです」


そして、

継は決めたように言った。


「僕も待ちます」


健太が聞く。

「……何を?」


継は答えた。

「その日を」


外。

夜の海。



だがその頃。


東京。

高層ビル。


林明浩はSNSの画面を見ていた。


数万件の投稿。

炎上は広がっている。


林は笑った。


「いい流れだ」


隣で男が言う。

「世論は動きました」


林は頷く。

そして言った。


「次は」


窓の外。

東京の夜景。


「公開対談だ」


林の隣。

もう一人の男。

静かに立つ。


鷹宮アレク。


彼は言った。

「文化は、戦場になります」


林は笑う。

「ええ」


そして言った。


「だから面白い」


夜は、

まだ燃えていた。



――公開対談は、

もはや避けられない。


逃げ場はなかった。



(第二十話 了)


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