表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
215/246

記録011|観測|沖縄:帰ってきたもの

最後の観測地点。

ここでは、誰も説明を求めなかった。

沖縄。


海が、近い。


風は暖かく、

空は静かに広い。


尚造は、しばらく何も言わなかった。



車窓の外。


見慣れない建物。

広い道路。

観光客。


「……変わりましたね」


挿絵(By みてみん)


尚造が、小さく呟く。


「100年経ってますから」


継は運転しながら答えた。


尚造は窓の外を見る。


「道が広いです」


「車社会なので」


「昔は、もっと狭かった」


継は何も言わなかった。



食堂。


ソーキそばが運ばれてくる。


尚造が覗き込む。


「……補給に向いてますね」


挿絵(By みてみん)


継が小さく笑う。


「最後までそれなんですね」


「温かいです」


「そばですから」


尚造は静かに頷いた。


「塩も取れます」


「感想が兵站なんですよ」



海沿い。


遠くに基地が見える。


尚造の視線が止まる。


長い沈黙。


継は何も言わない。


尚造は、小さく息を吐いた。


「……まだ、あるのですね」


「はい」


それ以上、誰も続けなかった。



平和祈念公園。


空の下。


白い碑。

風の音。

波の音。


尚造の足が、少しだけ止まる。


「……外なのですね」


挿絵(By みてみん)


「はい」


「隠さないのですね」


継は、静かに頷いた。



特設展示エリア。


屋外。


ガラスの下に——

“それ”。


太陽の光が反射している。


風が吹く。


葉が一枚、ガラスの上に落ちた。


誰も払わない。


尚造は、動かなかった。


「尚造さん」


継が静かに呼ぶ。


尚造は答えない。


ただ——

下を見る。


長い沈黙。


そして。


「……ここですか」


継は何も言わなかった。



最初の来場者。


年配の女性。


ガラスを見る。

ゆっくりと靴を脱ぐ。


だが、乗らない。


頭を下げる。

そのまま、去っていく。

一言も喋らない。



若い観光客。


「これ、何なんですか?」


継が答える。


「断定されていません」


「……そうですか」


それ以上、聞かない。



地元の男性。


しばらく黙って見ている。


そして、小さく言った。


「ここに置くんですね」


「はい」


長い沈黙。


「……そうですか」


否定もしない。

肯定もしない。


ただ、海を見る。



子どもたちが走っていく。


笑い声。

風。

波。


その横に、“それ”がある。


誰も騒がない。

議論もない。

説明もない。


ただ——

静かだった。



尚造は、ガラスの前に立っている。


だが、乗らない。


継が見る。


「尚造さん」


返事はない。


尚造は、海の方を見る。


そして。


「継くん」


「はい」


「世界中を回りましたが」


長い間。


「ここが、一番静かですね」


挿絵(By みてみん)


継は何も言わなかった。



夕陽が落ちる。


赤い光が、

ガラスの下の“それ”に重なる。


風が吹く。

波の音だけが残る。


その日。


初めて——


誰も、

“それが何なのか”

聞こうとしなかった。


ただ、そこにあった。



(つづく)

ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!


尚造と継の旅も、

ひとまず今回で一区切りとなります。


国が変われば、

文化も価値観も変わる。


しかし、

どの国でも変わらなかったものがありました。


――“あの作品”を見た人々の反応です。


その意味が明かされる日は、

もう近づいています。



そして次回。


舞台は2040年、沖縄。


長い時間をかけて、

少しずつ前へ進み始めた世界。


ですがその裏で、

止まっていた“何か”もまた、

静かに動き始めます。


物語は、第四部へ向けて加速します!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ