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Bingata Legacy 〜時と海を越える遺志〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
21/32

第十七話 価値を決める者の名前

文化は、

守れば残る。


だが、

語られなければ消える。


紅型は布だ。


しかし——

その布は、歴史を語る。


そして歴史は、

時に政治より重い。

帰り際、

リンは継を呼び止めた。


「一つ、個人的な意見を」


継は振り向く。

健太、彩乃、ジョンも足を止めた。


リンは少し考えてから言った。


「この作品」


「展示したくないのではなく」


「"勝手に解釈される"のが

 怖いのではありませんか?」


継は言葉を失った。



リンは続ける。


「博物館は中立です」


「ですが」


「展示は必ずメッセージになります」


彩乃が言う。

「でも、歴史ですよね?」


リンは頷く。

「はい。だからこそ」


「誰が語るのかが重要です」



健太が腕を組む。

「つまり」


「博物館は責任を

 取りたくないってことか」


リンは首を振る。

「違います」


「責任の範囲が違うんです」


タブレットを机に置く。

「博物館は文化を守ります」


一拍。


「ですが、

 歴史の解釈までは決めません」



ジョンが口を開く。


「アメリカでも同じだ」


三人が見る。


ジョンは肩をすくめる。


「戦争博物館なんて山ほどある」


「だが」


「誰の戦争かで展示は変わる」


継は静かに聞いていた。



リンは言う。


「沖縄も同じです」


「沖縄戦」


「米軍統治」


「本土復帰」


「基地問題」


「全部つながっています」


そして紅型の写真を見る。


「この作品は、

 それを一枚で語ってしまう」



沈黙。


継はゆっくり言った。

「……だから」


「博物館では難しい」


リンは頷く。

「はい」


「博物館では、難しいです」


健太が言う。

「じゃあ、どこなら出来る?」


リンは答えない。

代わりに聞いた。


「この作品、

 誰が作ったんですか?」


継は言う。

「仲村尚造です」


リンの目が少し動く。

「……尚造」


「聞いたことがあります」


彩乃が驚く。

「本当ですか?」


リンは頷く。

「沖縄染織史では有名な人物です」


そして言った。

「彼は職人でした」


挿絵(By みてみん)


「つまり、

 政治家ではありません」


継は答える。

「はい」


「でも、歴史は作りました」


リンは少し笑った。

「ええ、そうですね」



リンは窓の外を見る。


東京の夜景。


挿絵(By みてみん)


そして言った。

「守るだけでは足りない」


継が聞く。

「何がですか?」


リンは答える。

「意味です」


「文化は守られます」


「しかし」


「意味は守られません」


静かな声だった。


「誰かが語らない限り」


継は少し考える。

そして言った。


「……なら、語ります」


健太が笑う。

「やっと言ったな」


彩乃も笑った。


リンは静かに頷いた。



リンは言う。

「ただし、覚悟が必要です」


継が聞く。

「何の?」


リンは答える。

「反対です」


一拍。


「文化は好かれます」


「ですが」


「歴史は嫌われます」


ジョンが笑った。

「それは世界共通だ」


健太が言う。

「つまり、揉めるってことか」


リンは頷く。

「はい、確実に」



継は立ち上がる。

「いいです」


「やります」


彩乃が言う。

「展示?」


継は頷く。

「展示です」


一拍。


「ただし、場所は」


継は少しだけ笑った。


「まだ決めていません」



博物館の外。

夜。


健太が言う。

「で、どうする?」


継は空を見る。

「まず、味方を増やします」


彩乃が聞く。

「誰?」


継は答える。

「文化の人です」


ジョンが笑う。

「政治じゃなくて?」


継は言った。

「文化で勝ちます」



その頃。


東京。

林グループ本社。


秘書が言う。


「仲村工房ですが、

 展示を検討しているようです」


林明浩は静かに聞いていた。

「どこで?」


「まだ不明です」


林は資料を閉じた。

そして言った。


「文化はいい」


秘書が見る。


林は続けた。


「問題は」


一拍。


「誰がそれを使うかだ」



(第十七話 了)


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#政治要素あり #国際要素あり #史実ベース #フィクション
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