第十四話 林明浩被害者の会
世界には、
戦争より恐ろしいものがある。
それは――
ビジネスだ。
沖縄。
夜。
仲村工房。
扉が開く。
「こんばんは」
低い声。
ジョン・スティーブンスだった。
私服。
キャップ。
いつもの笑顔。
健太が言う。
「久しぶりだな」
ジョンは笑う。
「紅型を買いに来た」
一拍。
「……と言いたいところだが」
継が言う。
「相談があります」
ジョンは頷く。
「林明浩」
その名前で
空気が変わった。
⸻
ジョンが椅子に座る。
「なるほど。ついに来たか」
健太が聞く。
「知ってるのか?」
ジョンは笑う。
「有名人だ」
継が言う。
「敵です」
ジョンは少し考えた。
そして言う。
「俺はただの客だが…」
「これは公式じゃないが、
被害者を呼ぼう」
沈黙。
健太が言う。
「は?」
⸻
数時間後。
仲村工房。
人が増えていた。
台湾企業の社長。
香港の投資家。
日本の商社マン。
そして
スーツの男。
目が死んでいる。
継が小声で聞く。
「……誰ですか」
ジョンが答える。
「元林グループ」
健太が言う。
「元?」
男が言った。
「逃げた」
沈黙。
彩乃が聞く。
「……林から?」
男は頷く。
「人生から」
空気が重くなる。
ジョンが手を叩く。
「よし、始めよう」
「林明浩被害者の会」
沈黙。
健太が言う。
「名前どうにかならんのか」
⸻
林明浩被害者の会
台湾社長が言う。
「私は会社を買われた」
香港投資家。
「私は資産を奪われた」
日本商社マン。
「私は左遷された」
元幹部。
「私は人生が終わった」
沈黙。
継が言う。
「……ジョンさんは?」
ジョンは笑った。
「俺はFBIに呼ばれた」
沈黙。
健太
「なんでだよ」
ジョン
「林を怒らせた」
彩乃
「それだけで?」
ジョン
「それだけで」
元幹部が呟く。
「林は」
「怒らない」
「笑う」
沈黙。
元幹部
「そのあと」
「全部なくなる」
健太が腕を組む。
「なるほど」
「最悪の敵だな」
⸻
台湾社長が言う。
「だが、弱点はある」
継が顔を上げる。
「何ですか」
社長は言う。
「林は」
「文化が嫌いだ」
沈黙。
香港投資家
「文化は、計算できない」
日本商社マン
「だから、欲しがる」
元幹部が言う。
「そして」
「壊す」
沈黙。
継は静かに言った。
「壊させません」
ジョンが笑う。
「いい顔だ」
健太が言う。
「で」
「勝てるのか?」
ジョンは肩をすくめた。
「知らん」
沈黙。
そして、ジョンは言う。
「だが」
「林は今、少しだけ焦ってる」
継
「なぜ?」
ジョンは紅型を見る。
「文化は、しぶとい」
仲村工房。
夜。
笑い声が戻る。
⸻
だが、その夜。
東京。
高層ビル。
林明浩は
静かに言った。
「面白い」
「沖縄」
「少し遊ぼう」
夜景の向こうで
戦いが動き始めていた。
⸻
(第十四話 了)




