第十三話 守るものがあるなら
戦う理由は、
強さでは決まらない。
守るものがあるかどうか。
それだけだ。
沖縄。
仲村工房。
夕方。
工房の空気は、
少し重かった。
継はノートPCを閉じる。
健太が言う。
「つまり、林は本気ってことだな」
継は頷く。
「ええ」
林グループ。
巨大資本。
世界企業。
もし本気で市場を作れば、
沖縄の紅型など、
簡単に飲み込まれる。
⸻
彩乃が言う。
「……怖い?」
継は少し考える。そして笑った。
「正直に言うと、怖いです」
健太が笑う。
「安心した」
「お前まで無敵だったら、
俺の立場ない」
彩乃が机を叩く。
「でもさ」
一拍。
「怖いからって、やめるの?」
継は即答した。
「やめません」
沈黙。
そして健太が言う。
「だよな」
⸻
彩乃は、
作業台の上の紅型を見た。
青い海。
沖縄の島々。
花。
そして、
小さく描かれた二つの旗。
彩乃が言う。
「これ、ただの布じゃないよね」
継は頷く。
「はい」
健太が腕を組む。
「正直」
「俺は最初、
そこまで深い意味あると
思ってなかった」
彩乃が言う。
「でも、今は違う」
継は静かに言った。
「これは、歴史です」
⸻
沈黙。
工房の外から、
波の音が聞こえる。
⸻
健太が言う。
「なあ」
「もしさ、
林が本気で来たら」
継は答える。
「来ます」
健太は笑う。
「だよな」
彩乃が言う。
「じゃあ、どうするの?」
継は少し考える。
そして言った。
「一つだけ」
「林より強い味方を探します」
健太が笑う。
「そんなのいるのか?」
継は答える。
「いるかもしれません」
⸻
継は立ち上がる。
工房の奥。
古い棚。
そこから、
ノートを取り出す。
表紙には、
古い字で書かれていた。
「協力者」
彩乃が言う。
「それ何?」
継は答える。
「美咲さんのノートです」
ページをめくる。
そこには、名前が並んでいた。
研究者。
商人。
記者。
そして――
ある名前。
継は言う。
「まず、この人に会います」
健太が覗く。
「誰?」
継は少しだけ笑って答えた。
「常連客です」
彩乃が言う。
「常連?」
継は頷く。
「在沖米軍」
一行。
名前が書かれていた。
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ジョン・スティーブンス
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健太が言う。
「……いや待て」
「なんで米軍?」
継は笑う。
「さあ」
「美咲さんに聞いてください」
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その夜。
仲村工房に、
久しぶりに笑い声が戻った。
だが、
そのノートには、
まだ多くの名前が残っていた。
そして、
その中には――
林明浩が、
決して会いたくない人物もいた。
⸻
(第十三話 了)




