表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bingata Legacy 〜時と海を越える遺志〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
13/28

第九話 警告

※作者より

本作は特定の思想・国家・個人を

批判する目的の作品ではありません。

夜。


仲村工房。

いつもの作業台。


だが今日は、


健太も

彩乃も

継も


全員がそこにいた。


美咲が呼んだからだ。



隆司が腕を組んでいる。


いつもの軽い顔ではない。

少しだけ、真剣だった。


「今日はな」


隆司が言う。

「一つ、終わらせる」


継が首を傾げる。

「終わらせる?」


美咲が頷いた。

「うん。私たちの仕事」


沈黙。


健太が聞く。

「……何の話ですか」


美咲は答えない。


代わりに、

奥の棚へ向かった。


鍵を取り出す。

小さな箱。


その中から、

一枚の布を取り出した。



それは、

継が見たことのある紅型だった。


第八話で見た、あの布。


美咲が言う。

「これが、仲村家の仕事」


布を広げる。


挿絵(By みてみん)


紅型。


波。

花。


そして――

沖縄本島。


彩乃が息を止めた。

「……地図」


健太も言葉を失う。


継は、

ただ見ていた。



だが、

もう一つ描かれていた。


日本国旗。

そして

アメリカ国旗。


沈黙。


隆司が言う。

「意味、分かるか」


誰も答えない。



美咲が言う。


「1945年」


「沖縄戦の年」


継の背筋が凍る。


「この紅型は、

 その年に作られた」


健太が言う。

「……誰が」


美咲は静かに答えた。



仲村尚造(なかむらしょうぞう)



その名前を聞いた瞬間、

隆司と美咲の表情が、

わずかに変わった。


部屋の空気が変わる。


その名前を、

継は知らない。


だが、なぜか、

重さは分かった。



隆司が言う。

「俺の上司で、兄貴だ」


継が顔を上げる。

「え?」


美咲が続ける。


「そして、私の父」


「天才だった」


「そして」


「戦争の中で」


「ある紅型を作った」



継は、

布を見つめる。


沖縄本島。

波。

花。


だが、

よく見ると、

ただの装飾ではない。


線。

点。

配置。


まるで、

作戦図のようだった。



「……」


継は言葉を失う。



隆司が言う。


「気づいたか」


「それ」


「ただの紅型じゃない」


美咲が言う。


「これは」


一呼吸。



「警告」



彩乃が聞く。


「警告……?」


美咲は頷く。


「戦争の」


「未来への」



沈黙。



継は、

もう一度

紅型を見る。


日本。

アメリカ。

沖縄。


そして

布の裏に

書かれていた文字に

気づいた。


「……」


継は、

それを声に出して読んだ。



()()()()()()



健太が言う。

「は?」


彩乃も言う。

「……何それ」


隆司は笑わなかった。


ただ、

静かに言った。


「その名前が」


「この紅型のタイトルだ」


沈黙。


継の背中に、

冷たい汗が流れる。



紅型。

地図。

日本。

アメリカ。


そして、その名前。


"()()()()()()"


隆司が言う。


「今日で終わりだ」


「俺たちの仕事は」


美咲が継を見る。


「後は」


「あなたたちの仕事」


健太。

彩乃。

継。


三人が、

紅型を見つめる。



それは、

美しい布だった。


だが。

その中には、

戦争が描かれていた。


誰も、

まだ知らない。


だが――


この紅型は、

すでに誰かに見つかっていた。



(第九話 了)


※作者より


ここまで読んでいただき、

ありがとうございます。


この回から、

物語は少しだけ

重たいテーマに触れていきます。


本作は、

特定の思想や立場を

主張するための作品ではありません。


沖縄の歴史、

そしてそこに生きた人々の記憶を、

「物語」として描いていく作品です。


ただし、

在日米軍や国際関係といった題材が

苦手な方もいらっしゃると思います。


もし途中で

「少し違うかも」と感じた場合は、

どうか無理をせず、

ここで物語を閉じてください。


それでも、

この先を読んでくださる方へ。


この物語は、

誰かを責めるためではなく、

忘れられた声に

耳を澄ますために書いています。


最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#政治要素あり #国際要素あり #史実ベース #フィクション
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ