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Bingata Legacy 〜時と海を越える遺志〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
11/18

第七話 家族団欒(ただし常連客がうるさい)

仲村家に、

新しい家族が加わった。


だが――

家族になったからといって、

静かな日常が続くとは限らない。


むしろ。

少しだけ、騒がしくなる。

仲村家の夜。


畳の部屋に、食卓が並んでいた。

紅型の布が敷かれた低い机。


その上には、

・ゴーヤーチャンプルー

・ラフテー

・島豆腐

・泡盛


隆司が腕を組む。

「今日は祝いだ」


継は慌てた。

「い、祝いですか?」


「養子祝い」


あっさり言う。


美咲が笑った。

「隆司、急すぎ」


「いいんだよ」


隆司は泡盛を注ぐ。

「こういうのは勢いだ」



継は少し照れながら頭を下げた。

「……よろしくお願いします」


美咲が微笑む。

「こちらこそ。家族だからね」


その言葉に、

継は少しだけ安心した顔になる。



その時。

玄関のチャイムが鳴った。


隆司が顔を上げる。

「お、来たか」


継が首を傾げる。

「来た?」


隆司は立ち上がる。

「常連だ」



玄関。


扉が開く。

そこに立っていたのは――

外国人の男だった。


背が高い。

ラフな私服。

だが姿勢が妙に良い。


挿絵(By みてみん)


男は軽く頭を下げる。


「こんばんは」


完璧な日本語だった。


継は思わず言った。

「日本語お上手ですね!」


男は笑った。

「ありがとうございます。

 一応、沖縄生活が長いので」


隆司が笑う。

「こいつ、日本人より日本語うまいぞ」



男は名乗った。

「ジョン・スティーブンスです」


継は軽く頭を下げる。

「仲村継です」



その時。


彩乃が小声で言った。

「ねえ。この人」


健太が小声で答える。

「ああ。たぶんそうだ」


継は首を傾げる。

「?」



食卓。


挿絵(By みてみん)


ジョンは料理を見て目を輝かせた。


「ゴーヤーチャンプルー。

 最高ですね」


隆司が笑う。

「分かるか」


「大好物です」



その時。

ジョンがふと壁を見る。


そこには紅型が飾られていた。

波の模様。

沖縄の海。


ジョンは静かに言った。

「……美しい」


その目は、

職人を見る目ではなく、

パイロットが地形を見る目だった。


隆司が聞く。

「空はどうだ?」


ジョンは少し笑う。

「今日は風がいい」


健太がニヤッとする。

「高度?」


ジョンも笑う。

「三万フィート」


隆司が肩をすくめる。

「空はいいな。

 陸は歩くしかない」


ジョンは少し真面目な顔になる。

「だから尊敬してます。

 私は燃料が無いと帰れません」


健太が笑う。

「歩兵は燃料いらねえからな」


隆司

「海は?」


ジョン

「もっと揺れます」


健太

「海軍は船酔いとの戦いだな」


彩乃が呆れる。

「また始まった」


継は完全に置いていかれていた。

「?」


隆司が継を見る。

「こいつな、

 パイロットなんだ」


ジョンは肩をすくめる。

「ただの操縦士です」


健太が小声で言う。

「ただのじゃねえ」



その時。


ジョンが継を見る。

「あなたが継さんですか。

 SNSの投稿、見ました」


継が驚く。

「え?見てくれたんですか?」


「はい」


ジョンは言った。

「いい仕事です。非常に」


継は少し照れる。

「ありがとうございます」


ジョンは続ける。

「ただ」


一拍。


「売れた瞬間、世界は変わります」


継は少し驚いた。

「……え?」


隆司が笑う。

「こいつはな、

 そういう世界の人間なんだ」



その時。


美咲が湯呑みを置く。

「隆司。飲みすぎ」


隆司は笑う。

「祝いだからいい」



継はふと聞いた。

「ところで、ジョンさん」


ジョンが顔を上げる。

「はい」


継は聞いた。

「飛行機って、

 そんなに面白いんですか?」


一瞬の沈黙。


ジョンは静かに答えた。

「ええ」


少し笑う。

「空は、嘘をつきません」


健太が言う。

「職人と同じだな」


ジョンが頷く。

「たしかに」



その夜。


仲村家は久しぶりに、

にぎやかな食卓になった。


そして。


その笑い声の中で、

まだ誰も気づいていなかった。


この家が、

これから

どれほど大きな出来事に

巻き込まれていくのかを。



(第七話 了)


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#政治要素あり #国際要素あり #史実ベース #フィクション
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