ホットケーキ自転車部の悲劇 〜成路楽寺高校 部活動シリーズ〜
成路楽寺高校 部活動シリーズ②
第7回「小説家になろうラジオ」大賞参加作品
テーマは『ホットケーキ』『自転車』です(*´Д`*)
自転車のサドルがお尻に優しくない。
そう考えた先代の部長は、サドルにホットケーキを敷くという画期的なアイデアを思いついたのだった。
この高校の自転車部は、マシンのチューンナップにも余念がない。ハンドルやペダルやチェーンも妥協なきもので揃えているわけだから、ペダルに敷くホットケーキだって言わずもがな。
というわけで、調理部のエースと名高い2年の天宮胡桃は、半ば拉致に近い状態で、ホットケーキ自転車部に連れて来られたのだった。
「ひいいいい! そこのチェーンでビシビシしないで!? そこのゴムチューブでギュウギュウしないで!?」
「いやいや、そういうんではなくて……」
混乱する天宮に向かって、現部長の花輪はホットケーキ自転車部の実情を懇切丁寧に説明した。
車輪は飽きるほど触っているものの、フライパンなんか一度も触ったことのない男どもにとって、サドルに最適なホットケーキを焼くのは至難の業だった。
その結果、チューンナップ技術はどんどん衰退してしまった。
もうすぐ地区予選が始まる。
このまま中途半端なマシンで望めば、ライバルの角夜無高校に惨敗を喫してしまう。
「我々に、ホットケーキの焼き方を指南してほしい!!」
部員全員に頭を下げられ、天宮は困ってしまった。
いや、それは嘘だった。
男共が自分に頭を下げている光景は、天宮にとってとてつもない快感だった。
「そこまで言うなら――」
内心の興奮を作った困り顔で隠して、天宮は渋々頷いて見せる。
「でも、やるとなったら、わたし手加減しなくってよ……」
そして――
天宮の厳しいホットケーキ指導が始まった。
「そこっ! 混ぜすぎだ!」
「おい! もう火が通ってんぞ! 焦げるだろ!」
「ひっくり返すときはよお! 一旦端に寄せてからクルっ、だろ!? クソが!」
甲高くも激しい檄が飛ぶ。
部員達は挫けそうになりながらも、何度も何度もホットケーキを焼いた。
最高にやわらかいホットケーキを手に入れるため。
自らのお尻を、優しく包み込むため。
そして迎えた地区予選。
自らが焼き上げた最高のホットケーキを敷いて、部員達はレースに臨み――
そして、惨敗を喫した。
敗因は見た目からして明らかだった。
「てめえら! 負けたからってお残しは許さねぇかんな! そのホットケーキもちゃんと食えよ!」
部員達の努力によって生まれた数々の『失敗』は、彼らの腹に脂肪として着実に蓄えられていたのだった。
「食材への感謝を忘れんなよ!」
天宮は叫ぶ――
お読みいただきありがとうございます(*´Д`*)
今年は『成路楽寺高校 部活動シリーズ』と題し、架空の部活動での一コマを書いてみようと思いました(`・ω・´)
失敗したホットケーキは、部員達で美味しくいただきました。
体重管理もチューンナップの一つだぞ!




