表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と蔑まれた俺、覚醒したら“四重チート”で世界最強に ~その瞬間、すべての常識がひっくり返る~  作者: てん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/102

第21話 記録される

【現在:ユウスケ・フジオカ Lv12】


 王都アルトレの朝は、静かだった。


 高い城壁。

 整えられた石畳。

 騎士団の巡回が、規則正しく街を巡っている。


 ――だが、その内側で、

 空気は確実に変わっていた。


(……戦場より、重いな)


 ユウスケは、城郭内の会議棟へ向かう回廊を歩いていた。

 隣には、セリス。


 鎧は着けていない。

 だが、背筋は崩れていない。


「……この後の話し合い」


 セリスが、低く言う。


「剣より、言葉が飛びます」


「分かってる」


 ユウスケは、歩調を緩めない。


「だから、

 事実だけを置いてくる」


 ◇


 会議室。


 長い楕円卓の向こうに、王国の要人たちが並んでいた。


 騎士団上層。

 文官。

 魔導研究院の代表。


 そして――

 冒険者ギルドの代表。


「……では、始めよう」


 議長役の老騎士が、低く告げる。


「旧王国前線砦跡における、

 帝国の不法活動について」


 空気が、引き締まった。


 セリスが一歩前に出る。


「王国近衛騎士団、セリス・ヴァルティア」


 簡潔な敬礼。


「当該拠点にて、

 帝国魔導研究官ドクター・ヴァルガスを確保」


「人員実験、

 違法魔導装置、

 実験記録の一部を押収しました」


 資料が、卓上に配られる。


 魔法陣の設計図。

 被検体リスト。

 供給経路の断片。


 会議室に、ざわめきが広がった。


「……これは」

「人を……」

「帝国が、ここまで……」


 議長が、ユウスケを見る。


「冒険者ユウスケ・フジオカ」


「あなたの見解を」


 ユウスケは、立ち上がった。


 余計な修辞は使わない。


「帝国は、

 “勝てる戦争”の準備をしていました」


 一拍。


「英雄を作るのではなく、

 量産できる兵器を作るために」


 魔導研究院の代表が、眉をひそめる。


「再現性を、重視した……?」


「はい」


 ユウスケは、淡々と続ける。


「個の強さを否定し、

 統計で上書きする思想です」


 空気が、冷えた。


「……つまり」


 文官の一人が、低く言う。


「帝国は、

 人間を“資源”として扱っている」


「その通りです」


 ユウスケは、肯定した。


 ◇


 議長が、重く息を吐いた。


「……王国としては、

 公式に抗議を行う」


 だが、続ける。


「同時に、

 事態の公表には慎重を要する」


 視線が、集まる。


「民心への影響が大きすぎる」


 セリスの拳が、わずかに握られた。


 ユウスケは、静かに言った。


「隠せば、

 同じことが繰り返されます」


 一拍。


「見せるべきは、

 “恐怖”ではなく、

 事実です」


 会議室が、静まり返る。


 議長は、しばらく考え込み、

 やがて頷いた。


「……段階的に、公開する」


「記録として残し、

 監視体制を強化する」


 決定だ。


 ◇


 会議が終わり、回廊を歩く。


 外の光が、やけに眩しかった。


「……政治は、

 一撃では動きませんね」


 セリスが、静かに言う。


「だから、

 戦場が先に動く」


 ユウスケは、即答した。


「政治は、

 後から追いつく」


 セリスは、その言葉を胸に刻むように頷いた。


 ◇


 城門を出る直前。


 ユウスケは、

 ふと足を止めた。


(……また、だ)


 音でも、視線でもない。

 数値に出ない違和感。


 〈真理解析〉を、

 ごく浅く走らせる。


――反応、なし。


(……記録を、

 見ているな)


 誰かが、

 この会議の“意味”を測っている。


 だが、姿は見えない。


 ユウスケは、追わなかった。


 ◇


 王都の外。


 街道に出たところで、

 セリスが言った。


「……これから、どうされますか」


「当分は、

 冒険者だ」


 ユウスケは、答えた。


「だが――」


 一拍。


「目を逸らす気はない」


 帝国は止まらない。

 世界も、止まらない。


 そして、

 潮の流れは、確かに変わった。


 次に動くのは、

 海の向こうか。

 迷宮の奥か。

 あるいは――


 魔王領か。


 王都は、背後で静かに遠ざかっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ