第101話 家は、世界の外側に建てた
【王国近郊・緑の丘】
王都から少し離れた丘に、家が建った。
石と木で作られた、頑丈で大きな家。
見張り塔も、結界もない。
必要なかった。
ここは、戦場ではないからだ。
魔物もここには近づかない。
◇
朝。
窓から差し込む光に、
ユウスケは目を覚ました。
隣では、誰かが静かに寝息を立てている。
その向こうでも、別の寝息。
……静かではあるが、
完全な静寂ではない。
それが、心地よかった。
◇
最初の年。
リーナ、ルカ、セリスが、
新しい命を授かった。
庭に出る回数が増え、
家の中の動線が変わる。
「重い物は俺が持つ」
ユウスケは、相変わらず優しい。
「だーいじょぶ!」
ルカは、元気だ。
「……無理はするな」
セリスは、きちんと守る。
◇
やがて、
産声が三つ、重なった。
泣き声。
小さな手。
眠らない夜。
ユウスケは、
それを全部受け止めた。
◇
翌年。
クロエ、フィア、ミオが、
家族に加わる命を授かった。
「……不思議ですね」
フィアが言う。
「生命の増え方には、
理論がありません」
「……祈りでも、
説明できません」
ミオが微笑む。
クロエは、
何も言わず、そっと見守る。
◇
その年も、
家は賑やかになった。
泣き声が増え、
笑い声が増え、
洗濯物が増えた。
◇
さらに翌年。
アリシアと、
再びリーナが命を授かった。
「……また、
増えますね」
アリシアは、
少し照れながら言う。
「……はい」
リーナは、
穏やかに頷いた。
家は、
**もう“拡張前提”**になっていた。
◇
そのまた翌年。
ルカ、セリス、クロエ(双子)、
ミオ、アリシア。
命は、
まとめてやって来た。
「……これは」
フィアが、
本気で驚く。
「統計的に、
あり得ません」
ユウスケは、
苦笑した。
「……家族だ」
それで、十分だった。
◇
庭には、
子どもたちが走り回る。
年上が年下を引っ張り、
転んだら、皆で起こす。
「だめだよー!」
「泣くなー!」
「順番!」
ルールは、
自然にできた。
◇
家の縁側。
夕暮れ。
ユウスケは、
子どもを膝に乗せて座っている。
周りには、
皆がいる。
リーナの穏やかな笑顔。
ルカの大きな笑い声。
セリスの静かな安心感。
ミオの祈るような視線。
アリシアの落ち着いた気配。
フィアの観察する目。
クロエの、影のような優しさ。
◇
「……Xランクの家だね」
誰かが、冗談めかして言った。
「違う」
ユウスケは、首を振る。
「ここは、
ランクの外側だ」
◇
夜。
灯りがともる。
家は、
今日も壊れない。
世界がどう動こうと、
ここは揺れない。
戦いを越え、
選択を重ね、
辿り着いた場所。
家族。
それが、
ユウスケ・フジオカの
最後に選んだ答えだった。




