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第99話 提督との激突

 渦を巻く海の只中、黒き旗艦が波間を切り裂き、ドラゴスが前線へと進み出た。

 海を裂くほどの威圧に、人魚戦士たちでさえ尾を震わせる。


「さあ……見せてみろ。貴様らが信じる“自由の歌”とやらをな」

 低く唸る声が戦場全体に響き渡った。


「行くぞッ!」

 カイが翼を広げ、波を蹴って飛び出した。

 紅と蒼の拳に光を宿し、一直線にドラゴスへ迫る。


「はあああああっ!!」

 渾身の拳が唸りを上げ、黒き甲冑を狙った。


 だが――。


「遅い」


 ドラゴスが片腕を動かしただけで、拳は受け止められた。

 刹那、黒き大剣が振るわれ、海面ごと爆ぜる衝撃波が走る。


「ぐっ……!」

 カイは吹き飛ばされ、波間に叩きつけられた。


「カイ!」

 セレナが叫び、歌を重ねる。

 《蒼潮詠歌》の旋律が彼の体を包み、傷を癒す。


 同時に、フィオナが杖を掲げた。

「――《森羅裁断ジャッジメントリーフ》!」

 光の葉が空を舞い、ドラゴスを切り裂こうとする。


「ふん……小細工だ」

 ドラゴスが大剣を振り抜くと、黒き炎が渦となり、光の葉を焼き払った。


「俺もいくぜぇッ!」

 オルドが戦鎚を振り下ろし、甲板ごと粉砕する勢いで突撃した。


 しかし、ドラゴスは足を一歩踏み出しただけで衝撃を受け止め、逆に衝撃波を放った。

 オルドの巨体が弾かれ、波間に沈む。


「この程度か。海を覇するのは、俺ただ一人で十分だ」


 黒き大剣が再び振り上げられる。

 その刃に宿る魔力は、人魚奴隷たちの悲痛な歌を糧としていた。


「――《海魔交響曲クラーケン・リサイタル》!」


 絶叫のような歌声が海を揺さぶり、黒き触腕の幻影が水中から現れた。

 触腕は数十本にも及び、海と空を同時に叩き潰そうと迫る。


「なっ……これは……!」

 フィオナが瞳を見開く。

「捕らえられた人魚の歌を……強制的に魔術へ転換してる……!」


 触腕が一斉に襲いかかり、波間が黒に染まる。


 カイは必死に立ち上がり、拳を握った。

「……負けられねぇ……! こんな奴に……自由を奪わせてたまるか!」


 紅と蒼の光が再び拳に宿り、彼は荒れ狂う触腕の中へ飛び込んでいった。

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