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第87話 逃走戦

 広場の空気が一変した。

 砕け散った封呪環、解き放たれた歌声――それは人々の心に希望を灯した。

 しかし同時に、帝国兵の怒号が響き渡る。


「異端者ども! 捕らえろ!」

「人魚を奪わせるな!」


 数十の兵士が一斉に槍を構え、広場を包囲した。

 鎖を外されたセレナは、震える体を押さえながらも、必死に立ち上がろうとする。


「立てるか、セレナ!」

 カイが彼女を支える。


「ええ……少しなら……でも、歌は……まだ長くは続けられません」

 掠れた声に、彼女の消耗が伺えた。


「心配するな。ここからは俺たちが道を切り開く!」


 オルドが戦鎚を振り上げ、前方の兵をまとめて吹き飛ばす。

 石畳が割れ、砂煙が舞い上がる。


「カイ! 右手だ!」

 フィオナが叫び、杖を掲げる。

「――《森羅裁断ジャッジメントリーフ》!」

 緑の魔法陣が展開し、光の葉が盾の列を切り裂いた。


 その隙に、カイが拳を叩き込む。

「おおおおッ!」

 紅と蒼の衝撃波が兵士たちを弾き飛ばし、脱出路が開かれた。


「今だ、走れ!」


 一行はセレナを守りながら、狭い路地へと飛び込んだ。

 だが、背後から矢が降り注ぐ。


「チッ……!」

 カイが反射的に翼を広げ、仲間を庇った。

 矢は羽に弾かれ、地面に散らばる。


「ありがとう……!」

 セレナが思わず声を上げる。

 その声は短い旋律となり、カイの体を包み込む。


「……歌が……俺に力を……!」

 紅と蒼の瞳がさらに輝いた。


 フィオナが頷き、オルドが笑みを浮かべる。

「やっぱり歌は兵器なんかじゃねぇ……仲間を守る力だ!」


 追手を振り払いながら、一行は港町の外れへと走り抜ける。

 夜の海風が吹き込み、道の先に広がるのは――港を見下ろす断崖だった。


「くそっ、行き止まりか……!」

 オルドが戦鎚を握り直す。


 だがセレナは小さく首を振った。

「いいえ……ここなら、海に戻れるわ」


 彼女の瞳が深海の光を宿し、波の音が響く。

 ――港町を揺るがす本格的な戦いは、まだ始まったばかりだった。

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