第85話 救出の策
港町アルディナの外れ。
帝国兵の目を避けて一行は古びた倉庫に身を潜めていた。
「セレナっていうのか……」
カイは拳を握り、先ほど見た人魚の姿を思い出していた。
鎖に繋がれ、声を奪われてなお、彼女の瞳には確かに消えない光が宿っていた。
「助けたいのは分かるが、今すぐ突っ込んでも返り討ちだ」
オルドが低く唸り、戦鎚を壁に立てかける。
「港の兵は百以上。しかも海軍の補給拠点だ。無謀すぎる」
「ええ、正面から挑めば勝ち目はないわ」
フィオナが冷静に言葉を継ぐ。
「まずは首輪の仕組みを解かなくては。あれは“禁声封呪環”。歌の魔力を封じるための拘束具。
普通に外せば発動して、彼女の喉を焼き潰す仕組みよ」
「……なんて卑劣な」
カイは唇を噛む。
その時、倉庫の扉が静かに開き、フードを被った人物が入ってきた。
現れたのはウンディーネ族の青年だった。
「あなた方が“解放者”だな?」
青年は声を潜めながら言う。
「俺はこの町で潜んでいる者だ。……セレナを救う方法がある」
「本当か!?」
カイが身を乗り出す。
青年は頷き、巻物を広げた。そこには港の見取り図が描かれていた。
「明日の夕刻、帝国兵は見世物としてセレナを檻舟から広場に移す。その隙に奴らの注意を引けば、檻の施錠を外せる」
「つまり……陽動が必要ということか」
フィオナが地図に目を落とし、分析を始める。
「ならばオルドとカイが正面で騒ぎを起こし、その間に私が封呪環を解析して外す」
「危険な賭けだが……それしかねぇな」
オルドは不敵に笑い、戦鎚を手にした。
「俺の鎚で派手に暴れてやるさ」
カイは拳を握りしめ、深く息を吸った。
「絶対に助ける。セレナは俺たちの仲間になる――」
炎のように強い瞳で誓ったその瞬間、解放の戦いはもう始まっていた。




