第83話 港町アルディナ到着
山を抜け、広大な海が目の前に広がった。
碧い水平線が陽光を反射し、きらめく波が果てしなく続いている。
「これが……海……!」
カイは思わず声を上げた。
魚鱗族の血を持ちながら、こうして海を目にするのは初めてだった。
その瞳に映る景色は、憧れと同時に、不思議な胸騒ぎを覚えさせる。
しかし、海辺に築かれた港町「アルディナ」に近づくにつれ、その胸騒ぎは現実のものとなった。
町の入り口には帝国の旗が掲げられ、鎧に身を包んだ兵士たちが巡回している。
港には巨大な帝国のガレー船が並び、檻のような檻舟が係留されていた。
そこから聞こえてきたのは――歌。
だが美しい旋律ではなく、鎖に縛られた人魚たちが無理やり歌わされている痛ましい声だった。
「くっ……これが“人魚狩り”か……」
オルドが歯噛みする。
町の広場に入ると、さらに惨状は露わとなった。
捕らえられた人魚族が鎖に繋がれ、見世物のように晒されている。
兵士たちは鞭を振るい、声をあげるたびにその歌を「兵を鼓舞する魔法」として利用していた。
民衆は恐怖に沈黙していた。
帝国の圧政のもと、誰も逆らうことができず、ただ目を伏せるしかないのだ。
「なんて酷い……」
フィオナは杖を握り、唇を震わせた。
「歌は……本来、人を癒やし、心を繋ぐものなのに」
カイは拳を握りしめ、紅と蒼の瞳を細めた。
「……絶対に許せない。俺たちで解き放つ」
港町アルディナ――人魚狩りの拠点。
ここで新たな仲間と出会い、帝国との戦いはさらに熾烈さを増していく。




