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第80話 旅立ちの贈り物

 鍛冶街の朝は早い。

 炉の火が再び燃え盛り、槌音が街のリズムを刻む中、石畳の広場では市場が開かれていた。

 干し肉、果物、保存食、革袋に詰められた酒や水――旅に必要な品々が並んでいる。


「さて……海を目指すなら、準備を整えねばな」

 オルドが腕を組み、市場を睨む。

「保存食と武具の手入れ道具は必須だ」


「それなら薬草も買っておきましょう」

 フィオナが答え、布袋を手に取った。


 そんな中、カイはふと周囲の視線に気づいた。

 市場のあちこちから、住民たちが彼に目を向けていたのだ。


「カイ殿……」

 一人の老ドワーフが、包みに入れた燻製肉を差し出してきた。

「これは我が家の保存食だ。戦場で役立つだろう」


 続いて、エルフの娘が籠を抱えて駆け寄る。

「こちらは森で採れた果実です! 疲れた時に口にしてください!」


 ウンディーネ族の子供が革袋を差し出す。

「泉の清水を詰めました! 飲めば元気が出ます!」


 次々と差し出される品々。

 干し魚、薬草、布、木彫りのお守り……。

 気づけばカイの腕は山ほどの贈り物で埋まり、とうとう持ちきれなくなってしまった。


「お、おい! こんなに……!」

 慌てるカイを見て、人々は笑顔で声を上げる。


「それは俺たちの感謝の気持ちだ!」

「街を守ってくれた恩返しさ!」

「解放者よ、どうか無事で!」


 抱えきれないほどの荷物。

 だが、それは確かに人々の想いの重みだった。


 カイは立ち止まり、夢の中でアリシアに言われた言葉を思い出す。


――「あなたは守ったわ。だから、これからも守り続けて」


 胸の奥にじんわりと熱が広がる。

 紅と蒼の瞳に光が宿り、自然と笑みが浮かんだ。


「……ありがとう。みんなの気持ち、必ず力に変える。

 俺はもっと強くなって、絶対に守り抜く!」


 その声に、市場は大きな拍手と歓声に包まれた。

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