第70話 反撃の狼煙
夜空を覆う光の雨が、鍛冶街を白銀の地獄に変えていた。
矢は石壁を砕き、屋根を穿ち、広場を焼き払う。
絶望の光景の中、フィオナは必死に杖を掲げ続けていた。
「――《万象律詠》!」
虹色の魔法陣から放たれる六属性の光線が矢の群れを打ち消し、幾本もの閃光を相殺する。
だが、矢の数はなお尽きず、彼女の額には汗が滴り落ちていた。
「フィオナ! 無理をするな!」
カイが駆け寄ろうとするが、オルドがその肩を掴んで止める。
「ここは俺とフィオナに任せろ! 若造、お前は最後の一撃を温存しろ!」
そう言ってオルドは轟鉄隕槌を振り上げた。
大地に魔法陣が走り、隕鉄の紋章が赤熱する。
「――《隕鉄流星》!」
振り下ろされた戦鎚から流星の奔流が放たれ、空を切り裂く。
衝撃波は矢の雨を弾き飛ばし、街の上空に巨大な裂け目を穿った。
「いまだ、フィオナ!」
オルドの叫びに応じ、フィオナは杖を突き出す。
「――《森羅裁断》!」
緑の光が裂け目を広げ、葉と根の奔流が矢を切り裂いていく。
夜空を覆っていた光の雨が、一瞬だけ途絶えた。
「やった……!」
城壁の上から歓声が上がる。
種族たちが息を吹き返し、反撃の声が広場を揺らした。
マクシミリアンの目が血走り、炎に包まれた大槍を握りしめる。
「小賢しい……! だが所詮、延命に過ぎん!」
しかし、そのわずかな隙が――反撃の狼煙となった。
カイは拳を握りしめ、紅と蒼の瞳をぎらつかせた。
「次は俺の番だ……! もう二度と、誰も死なせない!」




