第68話 炎と矢の開戦
夕暮れ、鍛冶街の高台から見下ろした山道に、無数のたいまつの光が揺れていた。
槍を構えた兵の列、巨大な魔導大弩、火炎を宿した砲台が整然と進軍してくる。
その先頭に、炎に焼け爛れながらもなお立つ男――異端狩り将軍マクシミリアンの姿があった。
「見ろ……あれは人の姿か?」
「化け物だ……」
エルフたちが息を呑む。
マクシミリアンの肌は炎に爛れ、筋肉は黒焦げの鎧に覆われていた。それでも大槍を掲げる腕は力強く、瞳は狂気の光を宿していた。
「異端は、炎で浄化されねばならぬ……! 我が信仰をもって、この街を焼き尽くす!」
彼の叫びと同時に、戦鼓が鳴り響く。
魔導大弩の弦が引き絞られ、光を宿した矢が夜空を覆った。
次の瞬間――。
「――撃てぇぇぇぇッ!」
光の雨が城壁に降り注ぎ、同時に火炎砲台が轟音を上げて火球を放つ。
爆音と炎が街を揺らし、石壁がひび割れた。
「来たぞ! 防げぇッ!」
ドワーフの戦士たちが盾を掲げ、ノーム族が地下から支柱を震わせて壁を支える。
シルフ族が風の結界を展開し、光矢の一部を逸らす。
ウンディーネ族は泉の水を高く噴き上げ、火球を打ち消す。
「はあああああッ!」
フィオナが杖を掲げ、緑の魔法陣を展開する。
「――《森羅裁断》!」
光の葉が飛来する矢を切り裂き、火炎を遮る壁となる。
だが――。
「ぬるい!」
マクシミリアンが大槍を振り下ろす。
炎の奔流が魔法陣を焼き、街を揺るがした。
フィオナの杖が軋み、額に汗が浮かぶ。
「フィオナ!」
カイが駆け寄ろうとするが、次の瞬間、砲台が再び火を噴いた。
「持ちこたえろ! まだ始まったばかりだ!」
オルドが轟鉄隕槌を振り下ろし、飛来した巨大な矢を叩き折る。
火花と衝撃が弾け、ドワーフたちが奮起の雄叫びを上げた。




